韓国で開かれた世界スカウト・ジャンボリーの悲劇—韓国の役人たちの視察旅行/日本の政治家たちの視察旅行-(松沢呉一)
世界スカウト・ジャンボリー100年の歴史で最悪の大会に
「今年は熱中症の死者数で記録達成か—ヨーロッパでは昨年6万人以上が熱中症で死亡」の続報です。
韓国では若い世代が大量に熱中症で倒れました。
韓国全羅北道(전라북도)で開かれていた世界スカウト・ジャンボリー(WSJ/World Scout Jamboree)に世界159カ国から参加した43,000人の隊員が次々と倒れていく事態に。
8月1日から始まって、昨日閉幕しましたが、この報道は1週間前のもので、以降の分を含めると、熱中症で千人以上が倒れていて、新型コロナに少なくとも70名が感染したと報じられています。
日本はボーイスカウト、ガールスカウトの活動がさほど盛んな国ではないこともあるのでしょうが、日本のメディアではさらりと触れるだけの報道しかなされておらず、どれだけこの大会が過酷だったか、かつ背景にどれだけの問題があるのがわからんです。
国外メディアでは、ロイターや英ガーディアン、英BBC、米CBS、独DWも容赦ない批判をしており、「WSJ100年の歴史で最悪の大会」と酷評されています。それらの報道を見ると、酷評されて当然です。
以下はロイター。
155カ国は159カ国の間違いだと思いますが、組織委員会がどこの国が参加しているのか把握していなかったためのトラブルも起きていますから、ロイターの方が正しいのかも。
スカウト活動の歴史があり、規模の大きい国では怒りが強い上に、途中から取材をシャットアウトしたため、いよいよ欧米メディアはいきり立ったようです、
アオバアリガタハネカクシ・ジャンボリーに
台風のために参加者は一時避難するしかなくなったのは不運とは言えますが、それも予定に組み込んで対策をすべきでしたし、台風と関係なく初日から問題が次々と発生。日中は35度を超えながら、夜の気温は30度を切ってますから、閉店後の銭湯で清掃する方がはるかに過酷です。ただ、木を植える予定だったのが実現しておらず、木陰がない場所で1日いたら倒れますよ。
韓国の消防庁はあまりに危険だとして2日目にして中止要請をしているのですが、聞き入れられず。
そうなることが予想できていたのに医療設備が十分ではなく、初日から収容人数を超えてしまいます。食事も粗末で、配布されたゆで卵にはカビが生えていて、飲料水は有料、しかも高額なため、余裕のない若者たちは水も飲めず、これが熱中症を増大させた一因になってます。
それでも熱中症はこの大会ではメインの問題ではなく、それよりもはるかに多くの隊員が虫さされや皮膚炎で救護所に運ばれています。蚊も大量発生していたのですが、蚊に刺されただけでは救護所に行きません。最大の被害を生んだのはやけど虫ことアオバアリガタハネカクシという虫のようです。体液が皮膚に付着するだけでひどいミミズ腫れに。失明することもあるそうなので、目に異常が残っている隊員がいるかもしれない。
日本にもいるのですが、おもに湿地に棲息し、なおかつアオバアリガタハネカクシを潰さない限り、体液が漏出しないので、あまり馴染みはないかと思います。
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