松沢呉一のビバノン・ライフ

同じ原作の漫画が同時に連載される怪—「小悪魔教師サイコ」をめぐるトラブル[前編]-(松沢呉一)

 

どうしてこんなことが起きたのか

 

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ジャニーズ事務所のマネージメントとVTuberのマネージメント」にも関わる話ですが、話が飛ぶので、カテゴリーだけ「ジャニーズ事務所のマネージメントとVTuberのマネージメント」として、別立てにします。

以下は2ヶ月以上前の記事ですが、数日前に読みました。

 

2023年8月29日「ねとらぼ

 

今月から裁判が始まっています。原告である合田蛍冬(あいだ・けいと)さんのブログでも、概要はわかりますが、必要最低限のことしか書かれていません。裁判の当事者が裁判に関わることをダダ漏れさせると、自分を不利にしたり、今度は自分が訴えられたりしますので、経緯説明や裁判期日の伝達だけに留めるのが賢明です。

実際には合田さんは言いたいことがいっぱいありましょう。記事を読んだ私もいっぱい言いたいことが出てきましたので、以下書いていきますが、繰り返し、原文を確認するのは煩雑でしょうから、合田さんもリンクしている上の「ねとらぼ」の記事をまずはざっくりまとめます。敬称は略。

 

 

三石メガネ作の小説「小悪魔教師サイコ」を原作として、合田蛍冬(あいだ・けいと)が作画担当した同名の漫画が電子配信で売上7億円を超えるヒット。

ところが、原作小説をスマホ用に配信しているtaskey(株)が、新たに高野が作画を担当した同作品をオールカラーで漫画化することを公表(こちらも電子配信)。

対して、合田蛍冬は自身が作画を担当した「小悪魔教師サイコ」を発売しているぶんか社に、taskey版をストップして欲しい旨を要請。対して、ぶんか社は原作を管理するtaskeyには対抗できないと説明。合田蛍冬は事前にネームをチェックすることを申し入れ、taskey側は同意、その結果、多数の類似点が見つかり、taskey側もこれを認めて謝罪し、該当箇所を修正して販売開始。

それ以降も、高野のネームには、合田版を参照したと思われる点が続き、合田蛍冬は修正依頼のための資料を作成して送付。taskey側はこの作業に対して、合田蛍冬の名前をクレジットすることもギャラを支払うことも拒否したため、この作業は無償でなされた。

やがて、連載ペースの早い高野作画のtaskey版がぶんか社版を追い抜くところに至って合田蛍冬は限界に達し、この経緯をブログで公開。これを受けて、taskeyは原作の管理会社として合田版を中止とし、ぶんか社は告知されていた合田版の単行本の発売を延期。さらにぶんか社は、合田蛍冬に、taskeyが提訴する可能性を前提として、taskey、三石メガネ、taskey版の作画担当への謝罪が必要と主張。

以降は合田蛍冬、ぶんか社、taskeyの協議となるが、話はまとまらず、合田蛍冬の連載は休止。

こうした状況で、合田蛍冬はぶんか社を民事提訴、損害賠償の請求金額は3円。

 

以上が経緯です。

同じ小説を原作とした同じタイトルの漫画作品が同時に連載されたこと自体異例。仮に原作者と版元が「これでさらに金が儲かる」と考えて合意し、作画担当の二人の漫画家が甘受したのだとしても、「ねとらぼ」にあるように読者の混乱を招いており、その点について非難されていい。

訴訟は、それと関わりがありながら、契約に基づいていたかどうかをもっぱら争うものです。以下、見ていきます。

 

 

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