松沢呉一のビバノン・ライフ

K-POPは日本の芸能界と親和性が高い—日本レコード大賞とともに終焉する芸能界商法[後編]-(松沢呉一)

元AKB48の岡田奈々の数字は語る—日本レコード大賞とともに終焉する芸能界商法[前編]」の続きです。

 

 

YOASOBIとレコード大賞

 

vivanon_sentenceYOASOBI「アイドル」がレコード大賞にノミネートさえされなかったことで、「レコード大賞は終わった」と言われていますが、まだ終わってないと思っていた人たちがいることに驚くわ。

私が暮れの「輝く! 日本レコード大賞」を観ていたのは高校生まで。大人になれば、あんなん、レコード会社と事務所による接待と金で決定しているだけ、そこにテレビ局の思惑が関わるプロモーション・イベントだと気づきます。

ソニーとしては、YOASOBIはほっといても売れるので、だったら他をプッシュしたかったんじゃないですかね。YOASOBIはテレビの音楽番組やバラエティー番組の常連でもないので、TBSにとっても旨味がない。

それにしても、日本のポップス史上、坂本九以来の快挙を無視できることに呆れた人が多かったのでしょうけど、YOASOBI自身はそんなもんにあんまり執着してなさそうです。国外マーケットを視野に入れたら、国内の業界イベントは相対的に価値が落ちるのは当然です。まして金で得られる賞なんていらんでしょ。

今に始まったことでなく、もともとレコード大賞はこんなもんだったのが、音楽の聴き方や買い方が変化して、テレビの思惑通りにリスナーは動かない。結果、実際の人気や評価とレコード大賞の乖離が隠せないくらいに広がったということだろうと思います。

それについていけない人たちのためにレコード大賞は今後も続ければいいでしょう。お年寄りたちのために、3年に1回は演歌を大賞にするといい。あとは全部K-POP。

YOASOBIがエントリーされず、K-POPのNewJeansがエントリーされていることこそ、レコード大賞が何なのかを雄弁に物語ります。

他にも韓国絡みのJO1がエントリーされてますが、それとNewJeans「Ditto」は別レベル。どこの国の音であれ、日本人が一人もいない国外のグループによる外国語曲であり、日本デビュー前にノミネートされるのはさすがにおかしいべ。これから売るために宣伝費を投下したってことだとしか思えません。でも、これはレコード大賞に相応しいのです。

✳︎TBS内「65th 輝く! 日本レコード大賞」のページより

 

 

BTSのチャート操作疑惑

 

vivanon_sentence過去にK-POPはYouTubeで数字を操作した疑惑があって、対策がなされていますが、これによってK-POPに悪いイメージがついて、BTSビルボードのチャートを席巻した際も、数字を操作しているとの批判が米国で高まり、ビルボード自身もこれについての記事を出しています。

 

2021年8月21日付「billboard

 

本人たちのコメントも出ているこの長文記事の8割から9割は、これまでの栄光の軌跡を説明することに費やされていて、最後の方で疑惑に触れています。

結論としては、アーミーと言われるBTSのファンたちが組織的に曲を購入しているということでまとめています。それ以上のことがあるのだとしても証拠がないのに対して、ファンの行動はSNSで追えるし、ストリーミングの複数購入も隠しようがなく、ここまではBTS側は認めています。

CDの組織買いではブツが嵩張って、保存するにしても、処分するにしても面倒です。しかし、今の時代は金のある限りストリーミングで買い続けることができます。

日本でもAKB48のファンを筆頭に、CDの複数買いをしていた時代があって、レコード会社がヴァージョン違いを複数出し、事務所がサイン会や総選挙で煽っていましたから、韓国を笑えません。「日本は国内でやっていたからマシ」くらいのことは言えるとして。

当時、日本国内でも批判は出ていましたが、私は「売れなくなったCDを彼らが無駄に購入してショップやメーカーを支えているんだから、ほっとけばいい」なんて言ってました。その結果、AKB48がらみが上位を独占するようになって、ヒットチャートの信頼が下落。「オリコン1位」に意味がなくなりました。

 

 

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