松沢呉一のビバノン・ライフ

マイコプラズマ肺炎は中国政府の目眩しか?—中国のマイコプラズマ肺炎流行はなんか変[中編]-(松沢呉一)

日本と中国で真逆の風邪対策—中国のマイコプラズマ肺炎流行はなんか変[前編]」の続きです。

 

 

中国の子どもらに広がる肺炎はマイコプラズマ肺炎が主ではなさそう

 

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中国でも日本でも、多くの報道は子どもを中心とした肺炎多発の原因をマイコプラズマ肺炎に代表させています。中国政府が複数の原因があるとしながら、マイコプラズマ肺炎を筆頭にしているためです。

今回の肺炎多発の特徴は、マイコプラズマインフルエンザRSウイルスアデノウイルスなど7種、あるいは10種以上の感染症が同時流行していることであり、病院での診断でもっとも多いのはインフルエンザのようです。なのになんでマイコプラズマ?

中国政府も、大騒ぎになっていることは認めざるを得ず、今のところ、報道を規制していないように見えますが、マイコプラズマ肺炎はほっとけば自然治癒する病気としていて、パニックを抑えようと躍起になっています。

マイコプラズマ肺炎は感染力が強いようですが、感染したところで、症状は軽度です。重症化することは稀で、簡単に死ぬような病気ではありません。事実、時折流行しているのに、今回のような騒ぎにはなってません。日本でも同様。

ただし、耐性菌が登場していて、抗生物質が効かないため、薬で早期に治療することができない。しかし、ほっとけばいいのです。

中国政府は現実に進行している事態より軽度なものだとして、いつものことであると強調したいのでしょうが、今回は子どもに重症者が多数出ている以上、いつもと違います。

なぜそうなっているのかはなおはっきりしない。

✳︎2023年12月2日付「美国之音」 「ボイス・オブ・アメリカ」中国語(繁体字)版による昨日の記事。感染は拡大し続けており、さらに深刻になるだろうとの見方を解説した長文です。

 

 

なぜ中国だけなのか

 

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同時に複数の感染症に罹患して重症化しているとの説が出ています。マイコプラズマ肺炎とインフルエンザを併発すると重症化することはあり得そうですが、これまでにも、両者が同時流行したことはあったはず。

台湾メディアがこの件について積極的に報じていて、肺炎によって肺が壊死したり、他の重篤な病気を併発する例が出ていて、8歳の子どもが脳梗塞になったとの記事も出ており、この子は将来にわたって影響が残るとしています。

ここで引っかかるのは、マイコプラズマ肺炎に感染していない子どもでも重症化していることです。それらの子どもが何に感染したのか不明ですが、そもそも重症化のケースはマイコプラズマ肺炎は関係してないのでは?

中国では死亡者が出たのを隠しているとの説も出ていますが、これが事実だとしても、やはりマイコプラズマ肺炎と無関係なのでは?

前回確認したように、中国政府もWHOも、長らく新型コロナの強度の対策が中国で続いたため、とくに幼い子どもらはあらゆる感染症に対する抵抗力をなくしていることが背景にあると説明しています。

世界中で感染症に対抗する免疫のない世代が生まれていて、その世代の間で大規模なパンデミックが発生すると以前から警告していた研究者もいます。それが現実になった。

だから、新型コロナでは死なない若年層は放置でよかったのです。なのに、少なくない国で「子どもや若者がウィルスを伝播する」とかなんとか難癖つけて若年層をも巻き込みました。

 

 

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