松沢呉一のビバノン・ライフ

中国河北省三河市の爆発事故の疑問点—なぜ当局は間違った発表をし、国営放送の取材を妨害したのか-(松沢呉一)

香港人が呆れる中国人たちの行動—中国人のマナーを鑑賞する[1]」の追記です。

 

 

ガスを使ってない店からガスが漏れる謎

 

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中国河北省三河市での爆発事故現場で国営放送が取材を妨害されたことを知り、「なんか知られたくないことがあるのかな」と私は疑い出したわけですが、中国でも同様の疑いが広まってます。もっぱらSNS上のことですが、おそらく当局は消して回っているため、確認するのは難しい。

そもそも警察が国営放送CCTVの取材を妨害したこと自体が中国では衝撃的なことだったらしく、CCTVのみならず、中国政府記者協会が「報道はジャーナリストの権利だ」と題する声明を発表。国外メディアに対してはさんざん取材妨害してきた国のプロパガンダ機関が「どのツラ下げて」って思わないではいられないですが、彼らの当惑ぶりが伝わります。習近平の公用車が交通違反で切符を切られたようなもんですよ。

この異常な事態は各国メディアが大きく取り上げていて、その中に「どうも、これは変だぞ」と匂わせているものもあります。公式発表を疑うきっかけになったのは警察のお手柄か。

国営メディアはメンツを潰されたことに腹を立てただけですから、警察がていねいな謝罪文を出したことで満足し、この疑問については触れてませんが、法輪功系メディアはそのおかしさをはっきり指摘しています。

 

 

火元になったとされるフライドチキン店「永春唐揚」の建物ではなく、隣のビルから火炎が出たことが確認できます(この映像ではわかりにくいですが、間に細いビルがもう一棟あります)。道路に慌てて逃げ出てきたエプロンの男は「永春唐揚」の店員でしょう。しかも、「永春唐揚」はガスを使っておらず、電気のフライヤーを使用していたため、店側は火元であることを否定し、ガス会社もガスを供給していないと発表。これは台湾メディアも報じてます。

原因がはっきりしないのに同日中に現場を片付け始めたのが事実だとすると、いよいよ怪しい。中国では生存者が残っている可能性があっても、隠したいことがあると、コンクリートを流し込んだりします、ガス漏れが原因だとしたって、念入りな現場検証をしないと、再発しないように対策を講じることはできません。すぐに片付けたがる時は「疑ってくれ」と言ってます。

爆発した建物は宿泊施設だったそうで(ゲストハウスのような簡素なものだったよう)、そこが火元であるとするより、飲食店でガス漏れがあったとした方が「ありそう」と受け取られるので、誤った発表をしたと考えられ、何か三河市の警察、消防署としては隠したいことがあったか、詳しく調べるのが面倒なので、いつもこんなことをやっているのか、どちらかです。

 

 

もし反体制派の仕業だとしたら

 

vivanon_sentenceこの指摘通りだとすると、原因はガスではない可能性が高い。あれだけの爆発を起こせるのは火薬です。

宿泊施設であれば爆発物を持ち込むことができますが、もし反体制派によるものだとすると、より効果のある全人代の最中に北京市内を狙うでしょうから、全人代が終わって数日後に北京市の中央部から50キロくらいありそうな場所である点が引っかかります。

三河市は30年前に市制化され、ずいぶん開発されて北京のベッドダウンと言われるようになったとは言え、北京の人たちにとっては「貧農が住む田舎町」というイメージが残っている場所です。かつての三河市は、今と違う意味で北京のベッドダウンでした。貧農たちの子どもたちは、中学を出ると、北京の飲食店に住み込みで下働きをしたり、子守をしたりする。そういう人材の供給源と見られるような場所だったそうです。

 

 

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