ミャンマーとタイと中国の国境—移住する中国人たち[2]-(松沢呉一)
「なぜ正規の手続きを踏まず、密入国を選択するのか—移住する中国人たち[1]」の続きです。
ミャンマーの徴兵制と国外脱出
数日前に、知人からミャンマーの話を聞いていたところだったのですが、軍事政権が徴兵制を発表したことで、国外脱出が増加しているようです。
ミャンマーとタイとラオスに囲まれた、いわゆるゴールデントライアングルに私が行ったのは、今から30年前ですが、芥子畑は縮小したにしても、国境近くの様子はそれほど変わっていないと思います。
タイとラオスの国境には簡素なゲートがありましたが、現地の人々はノーチェックで行き来していました。正規の規則でそう定められているのか、慣習的にそうなっているのかわからないですが、パスポートなどのIDは不要で、その日のうちに戻れば隣国との出入りは自由。観光客がそこに紛れ込んだら、見た目でバレましょうが、地元の人たちがその日のうちに戻らなくても、チェックしようがない。
そのゲートから離れればジャングルであり、国境警備はアバウトです。麻薬王クンサーがモンタイ軍を率いてゴールデントライアングルを実効支配していましたから、国境の意味がない。
不法入国しても身動きが取れないので、多くのミャンマー人は正規ルートで出国しようとしてビザ申請をしていますが、今なおミャンマーとタイの国境もおそらくそんな感じでしょうから、いざとなればミャンマーからタイに不法入国することはそれほど難しくない。しかし、正規の入国ではないので、難民化するか、反政府軍に参加することになりそうで、徴兵制の実施は、政府軍の強化とともに、反政府軍を強化することにもなりそうです。
中国人が語るミャンマーとの国境付近の様子
以下の話は、中国人から以前聞いていたもので、いつか取り上げようと思っていたのですが、出すタイミングがありませんでした。中国とミャンマーの国境の様子がわかるエピソードなので、今回取り上げておきます。実際には具体的な名称や時期も聞いているのですが、どこの誰かわかるとまずいことになるかもしれないので、適当にぼかしておきます。
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