松沢呉一のビバノン・ライフ

台湾の地震と中国の地震に対する日本人の反応—どうやっても台湾のことが気になる-(松沢呉一)

 

台湾の地震・米国の地震・中国の地震

 

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ここ数日は台湾東部地震関連のニュースばかり観てました。あんだけ建物が倒壊し、崖が大掛かりに崩れたわりには、人的被害は少ない。建物の倒壊は1階が潰れたケースが多く、1階は店になっていて、店の営業前の地震だったのが不幸中の幸いではありますし、倒壊したのは耐震対策が十分ではない古いビルであり、この地震によって台湾の地震対策が相当に進んでいることがわかります。

そしたら、ニューヨーク周辺でも地震。

 

 

全然たいしたことがなく、人的被害は今のところゼロですが、レアってことで、大きく報じられています。

昨年末には中国の甘粛省で大きな地震があって、中国のことですから、正確な数かどうかわからないですが、100名以上が亡くなってます。今回の台湾東部地震の10倍以上。

 

 

甘粛省について日本でもっとも馴染みがあるのは、ここ数年、店が急増している蘭州ラーメンでしょう。蘭州市は甘粛省の省都です。あとはほとんど知られてないかと。

蘭州市はポツンと周辺から浮いている島のような都市で、蘭州市を離れると途端に荒涼とした土地が続き、この動画のような粗末な家が点在しています。窓にガラスが入っていない家もあります。特産はじゃがいもで、それ以外の作物はほとんど育たないと聞きました。つまりは貧農地域です。

死者が100人台に留まったのは蘭州市以外の甘粛省には大きな建物がないせいです。中国の東側だったら桁が違ったでしょう。

日本人がよく知る北京や上海とは町の風景も文化も人も違います。甘粛省はムスリムが強く、そのため、豚ではなく、牛や羊料理が中心です。蘭州ラーメンも牛骨スープに牛肉のチャーシューですし、羊の頭がまるまんま出てくる料理があったりします。とくにムスリムでは、漢族とは違う中央アジア系の顔が多く見られます。

甘粛省は行ったことがあるので、地震が気にはなったのですが、台湾の地震に比すと、私の関心は100分の1。台湾以上の人的被害が出たのに、報道の量も100分の1。中国のことですから、災害取材さえも自由にできないし、正確な情報が出ないため、SNSまで調べないと詳しい状況がわからず、関心を抱くだけ無駄です。共産党政府が中国民衆への関心を阻害しています。

北京や上海でも、地の果てである甘粛省で地震が起きたところで関心を持つ人は少なそうです。

✳︎神保町の蘭州ラーメン店「馬子禄(マーズルー)」より。パクチーが嫌いな人は無理ですが、あっさりとしたスープで食べやすい。

 

 

災害が中国経済に与える影響

 

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中国の経済はいよいよ末期に突入していて、銀行が続々破綻しそうで、これから一層国外に出たがる中国人が増えていきます。

どっかの国の記事だったと思いますが、中国経済低迷について解析していて、原因の一つとして災害の多発が挙げられていました。甘粛省の地震だけなら、中国全体からすると取るに足らないかもしれないですが、例年あれだけの水害に襲われ、共産党は被災者への補償なんてろくにしないとしても、インフラの復旧は馬鹿にならず、農作物の損害は甚大です。経済に影響がないわけがない。

今年は山火事も凄まじかったですし、中国南部では、このところ暴風雨や雹が猛威を奮っていて、中国のことですから、正確な数かどうかわからないですが、死者も出ています。

以下は広西省

 

 

 

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