『ノー・ヴォイス』 ペットは責任を持って飼いましょう!映画界初「ドラマ」&「ドキュメンタリー」の2本立て!(柳下毅一郎)
『ノー・ヴォイス』
監督 古新舜
脚本 古新舜、佐東みどり
音楽 和田薫
出演 市瀬秀和、樋口夢祈、畑中葉子、岡村洋一、浅田美代子
映画界初「ドラマ」&「ドキュメンタリー」の2本立て! なんのことやらとお思いでしょうが、これは捨てられて保健所で殺処分される犬猫を一匹でも減らしたい!との思いで作られた啓発映画。監督は釜石出身で父親との折り合いが悪く元引きこもりながら早稲田大学で応用物理を学んだのち駿台予備校で生徒にコミュニケーションを教えている古新舜(こにい・しゅんと読む)である……ってなんでそんなことを知っているのかというと、近所の公民館であった上映会のあとに監督のトークショーがあって、そこで立て板に水のごとくにまくしたてられたからである。本作では原作と撮影ならびにエグゼクティヴプロデューサーまでつとめているのだが、それ以外に「原案」「撮影監督」「製作」というクレジットがそれぞれあるので、はたして仕事の分担がどうなっているのかまったく不明。なんにせよ、ペットは責任を持って飼いましょう!というのがこの映画の主張で『猫なんかよんでもこない。』の主人公となど集団つるし上げを食らいそうな勢いだ。映画は一時間半のフィクションのあとに約30分のドキュメンタリーがくっついているという構成。劇映画は劇映画として完成しているので、なんでこんな構成にしたのかはよくわからないのだが、映画を見ているとある意味「元引きこもり」という経歴が納得できる部分もあったのだった。
さて、テツ(市瀬秀和)は何事にもやる気のない若者。今日もアルバイトをさぼって河原で昼寝中。と、そこに何者かが捨てたポメラニアン犬を見つける。これは……と言うのでかっさらい、ペットショップに持ち込む。
「いや……わたしどもでは買い取りとかしておりませんので」
「なんだよ使えねーなー」
とペットショップからペットショップへ持ち込むがどこにも買ってもらえず。しょうがねえ、捨てるか……としたところ、愛犬をつれて散歩中の犬おばさんに見とがめられる。アグレッシブな犬おばさんに追われてテツ、家に逃げこむ。犬の鳴き声を聞いたのがとなりの部屋に住むリョータ(樋口夢祈)。
「おい!このアパートはペット禁止だぞ!」
「人の家に勝手に入ってんじゃねえよ」
全然会話が成立してないんだけど……
翌日、売って一儲けをあきらめてテツは保健所の動物愛護センターに連れていく。
「なんで飼えないんですか?」
「オレの犬じゃねえよ。誰かが捨てたんだよ!」
(疑いの目)「じゃあここに名前と住所書いて。あと手続きに二千円かかりますので」
「金取るのかよ!じゃあいらねーよ!」
というと、保健所の前に犬を捨てて逃げ帰るテツ。とことん反社会的な男である。「こういうの多いのよね……」と仕方なしに収容する保健所職員。
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