『三十路女はロマンチックな夢を見るのか?』 武田梨奈の悲劇は年をとったことじゃなくて、思いつきのストーリーテリングを映画愛でごまかそうとするような連中に引っかかってることじゃないかなあ…… (柳下毅一郎)
→公式サイトより
監督 山岸謙太郎
脚本 上原三由樹、山岸謙太郎
出演 武田梨奈、久保田悠来、佐生雪、山村美智、秋吉織栄、近藤芳正、酒井美紀
三十路、それは女にとって期限を思い出させるイバラの道なのか……とナチュラルにセクハラをかましてくるこの映画。武田梨奈にとってのイバラの道としか言いようがない。まったくもって悲しいことである。日本映画界には女ドラゴンの居場所はないということなのか。そんなわけで武田梨奈が演じるのは三〇歳の誕生日を二日後の午後三時にひかえた(親が細かい性格だったので、誕生時間まできっちり記録されている)うだつのあがらないOL荻野那奈、職場でいきなり唯一の心の支えだった親友麻子(秋吉織栄)の寿退社を教えられ、コピーを取る手も止まる。家に帰ると、そこにはウサギ、トラ、シカの仮面をかぶった男女三人が待ち受け、那奈に銃をつきつける。は?
https://www.youtube.com/watch?v=ryxsZ2AUziQ
なぜか持参のビデオカメラを向けて撮影しながら滔々と喋りまくるトラ。彼らは四億円を強奪した銀行強盗三人組なのだが、実はリーダーのトラ仮面こと風間拓人(久保田悠来)は自主映画監督。才能もないのに映画にハマった拓人は借金がかさみ、ついにヤクザから借りた金を返すための銀行強盗を強いられたのである。だが、転んでもただでは起きない拓人は、その銀行強盗から逃亡までのいきさつすべてを映画にしてやろうと思いつく。
「そんなことをやった人間はいない! 映画史上はじめてだろ!」
と言い出すんだがいやそれドキュメントとして記録するのはいいけど、どうやって発表するつもりなんだ! なんかアイデアがあるのかと思って最後まで見てたけど結局何もないままだった。それ以上に、これ撮ってる最中に早々に「面倒くさい!」とマスクを脱ぎ、「かまやしないよ」と素顔をさらしてしまうのだ。素顔までさらして、どうするつもりだったんだよ! しかも三人組が那奈の家に押し入ったのはまったくの偶然で、朝まで身を隠す場所が欲しかっただけなのだという。それで縛り上げた那奈相手に顔をさらしてカメラを回しはじめる……っていったい何をどうしたいのか。古来誘拐犯が人質に顔を晒すのは相手を殺すときだけと決まっている。だから奈那は三人組がお互いを本名で呼んだりマスクをはずしたりしはじめたら全力でそれを止めなければならないはずなのだ。
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