『サムライせんせい』 明治維新百五十年記念!の幕末映画は、ゆるーいタイムトラベル+ご当地映画。お金がそれなりにかかってそうなのは、アニエスbの御威光か
→公式サイトより
『サムライせんせい』
監督・脚本 渡辺一志
原作 黒江S介
主題歌 北山淳貴
出演 市原隼人、忍成修吾、押田岳、武イリヤ、螢雪次朗、永澤俊矢、松川尚瑠輝、中村有志、奥菜恵、橋爪功
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高知県の某所にある私塾。「先生、よろしくおねがいします!」と子供たちがいっせいに声をあげると、障子を開けて丁髷を結い、着物を着たサムライが入ってくる。これがサムライせんせいこと武市半平太(市原隼人)である。なぜ幕末の志士が現代で寺子屋の先生をやっているのか、その理由は……
アニエスbに認められた男こと渡辺一志監督脚本による幕末映画は明治維新百五十年記念という流行るかと思ったが意外と盛り上がらなかった案件。ただし特筆すべきは「薩長土肥先行公開!」という強烈なギミック。実は2017年末、高知、山口、佐賀、鹿児島の四映画館で先行公開されたのである。これを思いついたのはすごかったが、これだけ強烈なギミックがあると、それで終わってしまって中身までたどりつかないことが危惧される。この映画もやはりその例外ではなく、ほぼギミック一発勝負……先行上映から長く待たされたが一向に公開される様子もなく、これやっぱり頑張って鹿児島まで行って見たほうがよかったのかしらんと思いはじめたころになってようやく東京上映。明治百五十年、もう終わりですがね……
文久三年(一八六三)、武市瑞山(半平太)(石原隼人)は、土佐藩主山内容堂(永澤俊矢)の不興を買い入獄する。苦しい獄中生活の中、ある日めざめるとそこは現代、高知の街角であった(いや本当にそんな感じでタイムスリップしてしまう)。
ふらふら町を歩いていると、女子高生から「うわー、サムライやん」と写メとられたり(ちなみになぜかわざわざよさこいの練習してる前を通り過ぎる)、スーパーでりんごを恵んでもらったり。警察に不審尋問されて抵抗、あわてて逃げ出した彼を拾ったのが当地の名士であるあけぼのグループ総裁佐伯(橋爪功)であった。警察すらも
「あ、佐伯さんが預かっていらっしゃるんでしたら問題ないですね」
と黙って帰っていく権力者ぶり。
「で、お名前は」
「武市瑞山と申す」
「なるほど。いや、スーパーでりんごを万引きされたと言われたのですが」
「いや、それは持ち合わせがなかったゆえ、後日支払いにうかがうと申して了解を得ておる」
「それなら問題はございません」
いやこれ自体は嘘じゃないんだけど、この会話成立するわけないだろ! 武市半平太が「スーパー」なんて言葉知ってるわけがないじゃないか! ともかく佐伯は武市と名乗るこの男、頭がイカれているのかふりをしているのかわからないが、並々ならぬ熱情と知識をもって武市半平太のコスプレをしているのだと考え、「実直なお人柄を見込んでのおねがいです」と自宅で小学生を集めての私塾を開講することになる。教えるのは論語とか習字とか……「頭がおかしい」と思っている人に子供をあずけるのもどうかと思うし、そんな塾に子供が集まってくるのもまた謎なのだが(まあ佐伯氏の御威光なのかもしれない)、いつのまにか武市半平太、「サムライせんせい」と呼ばれて人気者になり、生徒の母からも騒がれるイケメンぶりを発揮。佐伯の孫である寅之助(押田岳)とそのGFサチコ(武イリヤ)らと一緒に高知観光をし、有名活魚店(漁ま)に行ったり土産物屋(はりま家)に行ったりして地方映画らしくステマに余念ない。
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