柳下毅一郎の皆殺し映画通信

『恋する歯車』・・・イケメン戦隊の哀しきラブ・サスペンス

『恋する歯車』 (2013 東映)

監督 中西健二
脚本 池上純哉
音楽 海田庄吾
出演 小澤亮太、黒川智花、池田純矢、本田博太郎、勝野洋、光石研

 

 TOEI HERO NEXTってなんだ?どうやら日曜朝の特撮タイム、イケメンライダーとかイケメン戦隊とかで人気の若手イケメン俳優の人気を映画に活かそうという発想で作られた低予算ヒーロー映画シリーズらしい。本作の主人公、小澤亮太は『海賊戦隊ゴーカイジャー』の主演なのだそうだが、もちろんそれがなんのことなのか神ならぬこの身には知るよしもない。で、そのヒーローが「恋する歯車」って、それ、なに……?

警察官の両親が不慮の交通事故で死んでから荒れていた高岡祐一(小澤亮太)だが、酔っぱらって喧嘩したあとの夜中に少女と出会う。車道にふらふらと出てあわやトラックに轢かれそうになった少女を間一髪で救ったのだ。いや少女、と書きはしたが、どうにも……ポニーテールとかして若作りしてるんだが、なかなか……そんな老け顔の少女はリサ(黒川智花)と名乗った。

「何があったか知らないけど、元気出せよ」と言う祐一に「傷だらけの顔でそんなこと言っても、説得力ないゾ!」とキスして消える。翌日からリサと祐一(法科大学院生)はうきうきデート。リサは自販機のお釣り返却窓に五百円玉を仕込み、「ちょっとしたことで、人の人生が変わったりしたら素敵じゃない?」などと言う不思議少女なのだった。自分のことはあまり語りたがらないリサに祐一はどんどん夢中になってゆく。ついに結ばれる二人。だが、その二人の姿を監視カメラで見ている者がいる……

そのころ、街には社会の根本的改革を訴える〈市民グループ・ゼロ〉のデモ隊があふれていた。「原発をゼロに!」「格差をゼロに!」「汚職をゼロに!」「日本をゼロに戻す!」と既存体制の全廃を訴える反原連と維新を合わせたようなデモ団体。祐一の幼なじみ琢馬(池田純矢)はゼロのメンバーとして祐一を勧誘する。彼が断っても「運命だからいずれは来るよ」と上から目線。

リサは祐一の前から姿を消す。電話にも答えず、家に行っても出てこない。祐一はひょんなことから冷蔵庫の中に隠されていた携帯電話を見つける。そこには「隠しているのが辛い。1988年11月11日に起きたことを」とのメールが残されていた。そこに追い撃ちをかける事件が発生する。国会議員の息子がドラッグのODで死亡した事件でクラブのホステスが指名手配されたというのだ。その顔はリサのものだった。ちなみに本名鮫島りな26歳……やっぱりな……久しぶりに再会したリサの家に招かれた祐一。だが、そこについに警察の手が! 逃げる二人を匿ったのは〈市民グループ・ゼロ〉たちだった。

彼らのアジトで祐一は衝撃的な真実を明かされる。実は祐一は元過激派学生の忘れ形見だった。両親は公安警察に逮捕され、リンチのような取り調べを受けて死んだ。警察はその事実を隠蔽し、祐一の両親は残された赤ん坊を自分の子として育てたのだ。祐一の本名は榎本零、警察の陰謀の犠牲者祐一こそ爆弾テロによって「ゼロからの世直し」をはかる〈グループ・ゼロ〉の象徴としてふさわしい存在なのだ!キャハハハハ!と琢馬は笑うのだ。それにしてもこの「キャハハハハ」と高笑いするインテリ犯罪者というキャラクター、たぶんアニメかなんかから来てるんだろうけど、もう本当に勘弁してほしい……「ゲームのはじまりだ」とは言わなかったことだけは評価したいが、カラオケボックスでキャハハハと笑いながらモンキーダンスをバックに計画を説明するテロリストとか、どう見てもいちばんゼロなのは知性だ……大学生の自主映画にだってそんなの出てこないよ!

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tags: さあゲームの始まりです キャハハ 中西健二 光石研 勝野洋 小澤亮太 戦隊 池田純矢 特撮 高笑い 黒川智花

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