柳下毅一郎の皆殺し映画通信

『湯道』 昨今のサウナブームででっちあげたらしき思いつきだけの適当な話。しかしサウナは特に出てきません!

公式サイトより

『湯道』

監督 鈴木雅之
脚本・企画 小山薫堂
撮影 江原祥二
音楽 佐藤直紀
出演 生田斗真、濱田岳、橋本環奈、小日向文世、天童よしみ、クリス・ハート、戸田恵子、寺島進、厚切りジェイソン、笹野高史、吉行和子、ウエンツ瑛士、藤田朋子、吉田鋼太郎、窪田正孝、夏木マリ、角野卓造、柄本明

 

「古くから日本人は自然を敬いながら生きてきた……」ってこんな映画で「日本スゴイ」ですか! 企画・脚本小山薫堂という時点で胡散臭さしかない本作。「笑って、泣いて、整って」ってコピーがついてるくらいで、昨今のサウナブームを見た小山薫堂がフジテレビに話を持ちこんででっちあげたらしき「湯道」である。まあこれほどとっちらかった話もないというくらい思いつきだけの適当な話で

1)「湯道」は単なるギャグでしかない(普通「入浴道」とか言われたら風呂入りたくならないよね!)
2)湯の質にこだわる温泉グルメの「温泉評論家」が登場する。
3)だがメインの舞台は銭湯で、「風呂で人を幸せにする」がテーマ
4)サウナは特に出てきません!

 なんだこれ! この話だったら普通「心安らかで幸せな入浴を妨げるもの」つまり入浴を「道」として追求する日本人の心とか、「源泉かけ流し」以外は認めない心の狭い温泉評論家とかが敵になるはずだと思うのだが、「湯道」が日本人の心だとか言ってしまったせいで、どこにも葛藤もなければ物語のポイントもない、ダラダラしてるだけの話になってしまった。毎度おなじみ作りたいと思う主体がどこにもいない、誰一人責任を取らない産業映画という奴だ。当然ながらヒロインは橋本環奈である。

 

 

新進気鋭の建築家、三浦史朗(生田斗真)は新作コンペでしくじり、事務所もたたんで故郷に帰ってくる。実家である銭湯に帰ってみると、自分の部屋は住み込みのアルバイトいづみ(橋本環奈)に占領され、弟悟朗(濱田岳)は「なんか用なの?」と冷たい。二ヶ月前に父親が死んだというのに、史朗は仕事を口実に葬式にも帰ってこなかったので、銭湯を継いだ弟は冷ややかな目を向けている……って当たり前だよ! 実は仕事のほうがうまくいってない史朗、実家の銭湯をデベロッパーに叩き売ってマンションを建てようと皮算用をして帰ってきたのだが、そのことは史朗には隠している。その程度のチンケな開発計画がとっておきの切り札って、さっさと建築家とか諦めたほうがいいんじゃないですか……てかこの主人公がクソ野郎すぎて、なにひとつ共感できるポイントがないわけですが。

 

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