毎日1%のカイゼンを積み重ね、優勝へ【シーホース三河 ライアン・リッチマンHCインタビュー】
28年間チームを率いてきた鈴木貴美一前HCの遺産を受け継ぎながら、チームを変革し、躍進に導いたライアン・リッチマンHCが、就任初年度を振り返った。
若き指揮官の言葉は、バスケットボールについて話しているようであり、人生の美しさについて語っているようでもあった。
(インタビューは6月3日に収録)
Contents
敗戦という経験はチームの原動力になる
―2023−24シーズンは、リッチマンヘッドコーチ(HC)就任1年目で中地区2位に入り、3年ぶりのチャンピオンシップ(CS)出場を果たしました。新生シーホース三河にとって、素晴らしいシーズンになりました。
リッチマンHC:本当に素晴らしい経験を積ませていただきました。私も含めて新しいメンバーが加わって新たなチームカルチャーを構築する過程において、特に序盤は環境に慣れる難しさがありました。日本、そしてBリーグを理解する、チームメイトと関係を築く、新しいバスケットボールのスタイルを作り上げていく。多くの試練を乗り越えて、徐々にチームが力をつけたシーズンだと思います。タフな状況の中でも、チームを1%でも成長させるために毎日挑戦し続けた選手たちを褒め称えたいですし、チームスタッフ、経営陣、フロントスタッフ、パートナー、ファン・ブースターなど、すべての方が力になってくれたことに大変感謝しています。
―印象深い試合がたくさんあったシーズンですが、ベストゲームを挙げるとすればどの試合になりますか。
リッチマンHC:12月3日の琉球ゴールデンキングス戦のGame2です。この試合は4Qの残り5分の時点で17点リードしていました。しかしそこから追いつかれ、延長の末に敗れました。非常に悔しい敗戦となりましたが、この試合のおかげで前年度のチャンピオンチームに対して、「自分たちはかなり近づいていること」、それと同時に「もっと驕りなく戦わなければ勝てないこと」、その両面に気付かされました。
チームとしても、HCとしても、まだまだ成長できる部分が多くあると感じられたという意味で、ベストゲームだったと考えています。実際にその後は8連勝することができましたし、14試合中13試合に勝利することができました。
―少し予想外の答えでしたが、リッチマンHCが「結果」よりも「成長」や「過程」を重視していることが、今のお話からあらためて分かりました。
リッチマンHC:成長は重視していますね。レギュラーシーズン最終節の三遠ネオフェニックス戦は、CS進出に向けて絶対に勝たなければいけない試合でしたが、この2試合でも成長を示すことができたと思います。
いろいろな方から「ナーバスになっているか?」と質問されましたが、自分としては勝つ自信がありました。なぜならば、私たちはこの時のために9ヶ月という長い時間をかけて準備をしてきたからです。魔法をかけて、チームが急に強くなることはありえません。適切な形でメンタル面とフィジカル面の準備をすることが結果につながると考えていましたし、実際に私たちにはそれをやり続けてきた自負がありました。
―シーズン通して成長し続け、たどり着いたCSの舞台はいかがでしたか。
リッチマンHC:レギュラーシーズンより強度が高く、よりフィジカルだと感じました。また文字通り、すべてのポゼッションが非常に重要であると再確認させられた試合でした。
私たちの未来にとって非常に大きなことは、ここで失敗をしたということです。ここから私たちが進化していくために、この敗戦という経験は原動力になっていくことでしょう。
―来シーズン、目標である「優勝」を達成するためには、何が重要であると考えますか。
リッチマンHC:CSで結果を出したのは、2、3年かけて積み重ねてきたチームが多かったように思います。一方で今シーズンの私たちは新しいメンバーが非常に多かった。それを加味するとよい結果を残せたと感じています。
来シーズンはほとんどの選手が継続メンバーです。この1年間積み上げてきたカルチャーを、ここからさらに作り続けていくことがもっと上の結果へつながっていく。一つひとつ積み上げる工程は決して省略してはいけません。そういう意味で、来シーズンは、強いチームになるためにすごく重要な時期だと考えています。
リッチマンHC流のチームビルディング
―毎勝利試合後「今日のビート」としてMVP選手・スタッフを選出していました。「2023-24シーズンのビート」を選ぶとしたらどの選手になりますか。
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