「比江島慎・エースの覚醒」コラム
「もっと勝負を決められるプレーをしたいし、勝負強いシュートを決めることを今シーズンの目標にしたい」。開幕前の取材でこう語っていた比江島慎。こうした内容の言葉はこれまでも発していたが、不思議なもので、聞いた瞬間、今までとは違う印象を受けた。端的に言うと、より力強く伝わってきたのだ。今シーズンは、比江島にとって過去2シーズンとは全く違うシーズンになるのではないだろうか—。そんな予感を感じずにはいられなかった。(文・写真/藤井洋子)
ブレックス3シーズン目の挑戦
ブレックスに加入して3シーズン目を迎えた比江島。2018-19シーズンは、シーズン後半からチームに合流。翌2019-20シーズンは新型コロナの影響でシーズン中断と、過去2シーズンは、シーズン通してプレーできていないのが現状である。しかし今シーズンは日本代表の活動もなく、前チーム在籍時代を含め、プロになってはじめて所属チームで夏を迎えた。
夏の時期に行うのは、体力づくりや個人のスキル向上を目的とした基礎となる練習がほとんどだが、シーズン中にはできない練習にじっくり取り組むことできる貴重な期間でもあり、きついトレーニングが続くこの期間を共に乗り越えることで、チームの結束力がより強まるという側面もある。
昨シーズン、代表活動で開幕直前にチームに合流した竹内公輔は、この夏の時期に代表合宿やW杯があり、「チームに合流した時点で、正直、疲れがあった」と打ち明けたが、当然、それは比江島も同じだったはずだ。こう考えれば、今シーズンは2人ともフレッシュな状態で開幕を迎えられたはずで、こうした前提を踏まえて見ているせいか、今シーズンの比江島は心なしか動きも軽やかに見える。
9月12日の秋田ノーザンハピネッツとのPSG(プレシーズンゲーム)では、3ポイントシュート3本を決めるなどして22得点の活躍。9月27日の富山グラウジーズ戦でも16得点を挙げるなど二桁得点が続いた。PSGを全て終えた頃には、冒頭で書いた、“比江島にとって過去2シーズンとは全く違うシーズンになるのではないか”という個人的な「予感」は、少しずつ「確信」に変わっていた。
チームメートからのエール
その理由はいくつもあった。これまで取材をする中で、ブレックスの選手たちが比江島に対するエールをたびたび口にしていたのも、その一つの要因だ。
例えば、遠藤祐亮に「比江島はチームに馴染んできたと感じるか?」と聞いた時のこと。
「チームに馴染んできているというか、 “比江島が中心のチーム” だと思う。比江島を抑えられるディフェンスができる選手は、ほかのチームにはいないと思うので、毎回、『自分が点を取る』という気持ちでいってくれたらいい」と話し、喜多川修平は、「比江島ぐらいのレベルなら、もうちょっと『俺が俺が』みたいな感じになってもいいんじゃないかな」と語っていた。
中でも強い印象を残したのは、渡邉裕規のこの言葉。
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