バスケットボール・クラッチ

笠井康平「『ディフェンスが武器』だと自信を持って言えるように」(インタビュー・コラム)【無料記事】

ブレックスはこれまでとは違う勉強の場

笠井は2022年に再び移籍することになるのだが、ここでも候補となったチームの中には、メインガードで出られるところはあまりなく、「メインの選手が決まるまで少し待ってほしい」と言われることがほとんどだった。

ブレックスは、ポイントガードのポジションに田臥勇太、渡邉裕規、鵤が在籍していたが、逆にそうしたメンバーが決まっていたため、早い段階でより詰めた話ができ、はっきりとビジョンを伝えてくれた。「そうしたこともあって、わりとすぐにブレックスに行こうと決めることができました」と話す。

名古屋Dでは、プロになったのに何もできなかったという思いが強かったため、プレータイムがほしくて、自分を必要としてくれるチームを探して群馬に移籍した。群馬ではプレータイムを勝ち取り、2シーズン目にはキャプテンに就任。念願のB1でもプレーした。同じポジションには五十嵐圭というベテラン選手もいたが、そうした中でもコンスタントにプレータイムを獲得し、名古屋D時代より成長できたという自信もあった。

そして今回は、群馬に移籍を決めた時のように「とにかくプレータイムが第一優先」とは考えていない。「よりレベルの高いチームへ移籍して、自分もステップアップしたい」。それが、ブレックスへ移籍を決めた、一番の理由だった。

 

 

「ブレックスは、個人個人の技術の高さはもちろんですが、メインとなるメンバーがずっと変わらないこともあり、お互いを鼓舞し合うなど、チーム力の高さや団結力を感じていました。そういう意味でも、ここは今までと違った勉強の場だと思っています。いろんなキャリアを持った選手がいる中でプレーできるというのは、とても刺激になります」

今は、毎日、何かしらの悩みが湧き上がり、それを考えて、映像を観たり、誰かに教えてもらったりする。「その意味では、名古屋Dの時とはまた違う学びの場になっています」と話す。

「練習や試合で少しずつ経験を積み重ねて、シーズン終盤には、1分でも2分でもチームに貢献できる選手になっていたいです」、そう目標を述べた。

 

こうしてスタートしたブレックスでのファーストシーズン。開幕2試合目の琉球ゴールデンキングス戦(2022102日)で、笠井はブレックスでの初得点を挙げた。翌週の大阪エヴェッサ戦(10月8日、9日)にも出場したが、チームは黒星が先行していたこともあり、以降、なかなかプレータイムを獲得できない状況が続いた。

「最初はちょっとショックな気持ちもありましたが、佐々宜央ヘッドコーチ(HC)が、『ネガティブには取らないでほしい』と伝えてくれたことで気持ちも楽になり、試合に出た時は深く考えすぎずにやろう、というスタンスになれました」と、思いを明かしてくれた。

 

“突き抜ける自分の武器”を…

シーズン中盤頃、佐々HCに「笠井選手に期待したいことは何んですか」と聞いたことがある。

「ハードなディフェンスやスピードという良さもありますが、ブレックスでは応用力が必要になります。その応用力を見に付けていくところで少し苦しんでいるのかなと思います。彼はガードポジションなので、リーダーシップを発揮しないとか声が小さいとか、表現力が高くないとやっぱり難しい部分もあります。自分のキャラじゃないとか、そういうことなんて関係なく、積極的にコミュニケーションを取ってほしいです。もう一つは、どこで飛びぬけていくのか、だと思います。何か“突き抜ける自分の武器”を見付けてほしいですね」(佐々HC)

このコメントを笠井に伝えたところ、

「例えばコミュニケーションの取り方でも、“教えてもらう”というスタンスがまだ抜けていない部分があるのは自覚しています。対等に『自分はこう思う』と言えるようになったら、自然とコミュニケーションも取れるのかなと思いますし、周りへの声の掛け方も変わってくると思うので、まずはそこからできるようになっていきたいです」と、冷静に自分を分析していた。

 

今シーズンの目標を聞いた際も、実にブレックスの選手らしい答えが返ってきた。

「自分で何十点も取るとか、派手なプレーをするようなタイプではないので、ディフェンスで相手を嫌がらせること、球際で頑張り、チームに流れを持ってこれるような、数字には残らないようなプレーを頑張れる選手になりたいです。まずはディフェンスで流れを変えられる選手になること。出ている時間帯にオフェンスを組み立てて、『笠井が出ていると流れがいいな』『流れが変わるね』と思ってもらえるような選手になりたいです」

 

「佐々HCは、突き抜ける自分の武器を見付けてほしいと話していました。現時点で、自分の武器になりそうだと思うものは何ですか?」。最後にこんな質問をしてみた。

「このチームで長くやってきている人にとっては当たり前に正解となっていることが、自分の中では思うこともあって。例えばディフェンスの決まり事などは、周りの選手は普通にやっていることでも、僕は『そっちだったのか』と、後で思うこともあるんです。なので、今は足を使ってチームにエナジーを与えることを意識しながらやっています。ミスなくプレーができた上で、自分の良さを出せるのが理想です。そうしてシーズンが終わった時に、『ディフェンスが武器です』って、自信を持って言えるようになりたいです」

現在、ブレックスはチャンピオンシップ出場に向けて厳しい戦いが続いており、笠井に毎試合出場機会が与えられているわけではない。しかし、その謙虚な姿勢と学ぶ意識を持ち続ける限り、活躍するチャンスはきっとあるはずだ。ハードなディフェンスでチームにエナジーを与える。積極的にコミュニケーションを取り、チームの流れを変える。そんなリーダーシップのあるポイントガードとして、チームをけん引する姿が観れる日を楽しみにしたい。

 

 

宇都宮ブレックス 笠井康平

 

 

 

 

前のページ

1 2 3
« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ