LCD サウンド・システム『ルージング・マイ・エッジ』 - いつの日か、この位置に俺が立つんだ。俺は俺の曲を作るべきだ (久保憲司)
『ボヘミアン・ラプソディ』日本だけでなく、アメリカでも大ヒット、音楽映画史上二番目となる興業収入を記録したそうです。一位はNWAの『ストレート・アウタ・コンプトン』だそうです。『ボヘミアン・ラプソディ』がもっと勢いを増したとしても『ストレート・アウタ・コンプトン』の収益を越える見込みは無いそうです。なぜアメリカでヒップホップが強いかという説明を書こうと思ったのですが、その前にもう少し『ボヘミアン・ラプソディ』の話というか、こぼれた話を、こぼれたんでどうでもいい話なんですが、お付き合いください。
『ストレート・アウタ・コンプトン』『ボヘミアン・ラプソディ』の大ヒットって、他人の人生を疑似体験していることだと思うのですが、どうでしょう。今の映画にとって一番大事なことは体験だと思うのですが。『オデッセイ』『ゼロ・グラビティ』などは宇宙旅行を体験させるみたいな。
こういう映画の始まりってフランシス・フォード・コッポラの『地獄の黙示録』だと思います。「ベトナムでは米兵がドラッグやりながら戦争しているらしいぜ」という話を訊いたフランシス・フォード・コッポラが(正確には『地獄の黙示録』を監督するはずだったジョージ・ルーカスか脚本家のジョン・ミリアスだと思いますが)、戦争を知らない子供たちに戦争を体験させてやるぜという心意気で作られた映画です。初めて見たら本当に戦争を体験したような気にさせてくれます。
僕も子供の頃、『地獄の黙示録』を観て、「すげえ、すげえ」と言っていたら、スタンリー・キューブリックがいつものように後出しジャンケンのように『フルメタル・ジャケット』を出してきて、戦争映画もこれで打ち止めかと思ってたら、スピルバーグの『プライベート・ライアン』が、戦場の中に放り込まれたかのような究極の戦争映画を作った。この後『フューリー』『ダンケルク』『ハクソー・リッジ』という戦争映画の名作が作られたが、『プライベート・ライアン』から技術的にはそんなに進化していない。
『地獄の黙示録』『フル・メタル・ジャケット』『プライベート・ライアン』とどう変化していったかというと、細部のこだわりだったと思うのです。それが映画をリアルなものにしていったのです。
『ボヘミアン・ラプソディ』もそうです。なぜみんながあそこまで入り込むかというと、細部のこだわり方が生むマジックに引き込まれていくんだと思います。ブライアン・メイの機材など完璧に同じなんです。ブライン・メイのギターは世界に一本しかないんですけど、そのギターを本人から借りてるのかなと思わせるくらいのこだわりを感じるのです。そこに僕たちは引き込まれていくんじゃないでしょうか。
映画でクイーンのメンバーがライブ・エイドの出番前に控えている楽屋がキャンピング・カーでとってもおしゃれなんですけど、そんなことあの時代にやってたっけと思ってたら、「あっそうだった」と僕は思い出したのです。
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