松沢呉一のビバノン・ライフ

出演を辞退をした事情-厄介な「レイシストカウンター」批判 1 (松沢呉一) -2,765文字-

※写真は「レイシストカウンター」とは関係がありません。私が撮ったものを適当に。

 

 

「レイシストカウンター」批判をためらう理由

 

vivanon_sentenceIMG_7972今もわたなべりんたろう監督「レイシストカウンター」について触れることに躊躇はあります。

「カウンターに好意的な映画を否定すること」「アホのネトウヨに格好のネタを提供すること」に対する躊躇だけではありません。もうちょっと面倒な「内部の論理」みたいなものまで踏み込まざるを得ず、内部への批判になるため、厄介なのです。

これを面倒で厄介だと感じるのは、なお私の中にも「内部の論理」があるからに他なりません。

それでも最低限は書いておこうと思って何度もFacebookに書いては消し、知り合いの投稿にコメントしては消し。これを繰り返しているうちに、「書くんだったら、長文でちゃんとまとめるべきだな」と思い直しました。

 

 

「酷いくらいに力が無さ過ぎる」

 

vivanon_sentence5月2日のこと。ジャーナリストの木村元彦さんが、Facebookに以下を投稿しました

 

友達も知り合いもたくさん出ているし、カウンターを応援したいから黙っていようかとも思ったのだけれど、やはりきちんと声を上げないとだめだな。この映画 について言うと、酷いくらいに監督に力が無さ過ぎる。ドキュメンタリーを舐めている。板付きでインタビューを撮って、繋いで、それだけ。入場料を払ってピ ンのボケたラッシュフィルムをただ見せられた気分だ。構成以前の問題で画も音も撮りきれていないが、そもそも何を描きたいのか伝わって来ない。現場で闘っ ている多くの人たちに協力や提供をしてもらいながら、演出も編集も稚拙過ぎていろんな厚意を台無しにしている。要は映像作品の体を成していないのだ。よくこれで小屋にかけたな。「正しいと思うものを描くから下手でも良い」、はずがない。テーマが重要なものこそ、表現者は深く考えて作らないとダメだ。

Facebook

 

ここでも映画そのものについての批判と同時に「正しいと思うものを描くから下手でも良い」という「内部の論理」を批判しています。「レイシストカウンター」の批判は同時に「内部の論理」の批判に及んでしまうのです。

木村さんもジャーナリストの立場から、レイシズムの問題を書き続け、デモの現場にも足しげく通っていますから、カウンター内部の存在です。一度は軽く書いて、改めてこれを書いた間に葛藤があったことが想像できます。

私もここにコメントをしました

 

私はインタビューを受けたのですが、粗編を観て、「外してくれ」とお願いしました。「何をしたいかわからない」「ミスとしか言えない映像が混じっている」 「自分のインタビューを入れた意図も見えない」「インタビュー集にしてもタイミングが遅すぎる」といった点とともに、著作権をクリアしていないと思われたためです。具体的にはYouTubeから拾った動画を使っていました。

出演を断った上で、「著作権はクリアしないとまずい」と進言したのですが、「弁護士に相談している」とのこと。こっちは辞退した立場ですから、言うべきことを言っておしまい。

その段階での私の感想はメルマガに書いていますが(ボロクソです)、完成品は観ていないし、観る気もないので、以降、一切ノータッチで今に至っております。

新たにろでぃさんの写真を入れたりはしても、どうやらあの段階のものと大きくは違わないみたいですね。現場に来ているのにデモの撮影をしていないのですから、大きく変えようもないでしょうし。

Facebook

 

IMG_7697木村さんが書いた途端に「私はインタビューを辞退してます」と表明するのはいやらしくもあります。「もっと早く言えよ」ってことですけど、辞退した段階で「関係なし」ということであり、それ以降起きていることは私の関与することではありません。その時にメルマガでさんざん書いておしまいです。

しかしながら、この映画が上映され、ちいとは話題になるにいたって、「問題ありの映画である」と表明しないでいたことについては反省しないではない。それをここまで広く目に触れるところで表明しないでいたのは、やはり私の中にある「内部の論理」がゆえです。

触れないことも意思表示のひとつではあっても、そんなもんは人には伝わらない。どこがどうして問題なのかを説明しないと、映画を観てもわからない人がいるでしょう。

 

 

私がインタビューを辞退した経緯

 

vivanon_sentenceコメ欄に書いたことをもう少し正確に説明しておきます。

 

 

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