中国人のトイレットペーパー備蓄量に唖然とする—新型肺炎(COVID-19)について触れにくい事情[12]-(松沢呉一)
「なぜ中国ではトイレットペーパーの買い占めが起きないのか—新型肺炎(COVID-19)について触れにくい事情[11]」の続きです。
便器に紙を流さないことが関係しているのか?
前回見たように、水洗化率はトイレットペーパーの買い占めとはあまり関係がなさそうです。
しかし、中国の記事を読んでいる時に、「日本ではトイレットペーパーはすべて便器に流す」とわざわざ書かれているものがありました。これで思い出したのですが、中国では、トイレットペーパーを便器に流さないのが一般的です。紙づまりしやすいため、便器の横に設置してあるゴミ箱に捨てます。
これも良質の古紙を確保しにくいことと関係していそうですが、紙質が悪いためと、水圧が足りないためと言われています。
そのため、日本に来た中国人が紙を捨てようにも個室内にゴミ箱がないため、便器の外にわざわざ捨てるのがいて清掃の人が困るという話があったりします。
その方式であれば、トイレットペーパーの必要性が落ちます。紙だったらなんでもいい。このことは買い占めに走らない理由に関係しているかもしれないですが、台湾でもその習慣は今でも残っていますから、台湾で買い占めが起きたこととの辻褄が合いません。インドネシアやタイもそうじゃなかろうか。
ここはさらに検討する余地のある要素として頭に入れておきます。
※2020年3月1日付「蛋蛋赞」 この記事は日本のトイレットペーパー騒動を取り上げていて、日本にはトイレにゴミ箱がなく、便器に流せると書かれています。内容はひどくて、写真も台湾のものが使われています。
最初にトイレットペーパーを買い占めたのは中国人
中国の記事やブログを読む限り、「なぜ中国人はトイレットペーパーの買い占めをしないで済んでいるのか」という疑問の答えは「そんなものより、食べ物の方が大事だから」ということになりそうで、さすが食べ物にうるさい中国人だけのことはあると思ったりもしますけど、食べ物が第一であることは世界共通、食ったらウンコをするのも世界共通ですから、答えになっていない。
中国でも「外国人はバッカでえ」で終わらせる人たちも多数いて、これについて触れている中国の報道やブログを読んでも納得できることを書いているものは見つけられなかったのですが、ヒントになるものはいくつかありました。
2020年3月4日付「澳洲印象」
これはオーストラリアに住む中国人のブログです。面白いです。後半は紙の代わりに雑誌や石を使うことを勧めており(笑)、冗談にせよ、紙を流さない習慣と関係しているかもしれない。なお、紙が普及するまでは、世界各国で草や木の葉、木片などを使用していました。乾燥しているので、何も使わないという文化圏もあります。
このブログの前半では「なぜか」を問うています。といっても「中国人は買い占めないのに」ということではなく、「なぜ人はトイレットペーパーを買い占めるのか」という疑問であり、友人たちに聞いたところ、トイレットペーパーを買い溜めした人でも「わからない」と答えたとのこと(この友人たちが中国人かどうか不明)。
なぜ「中国人は買い占めないのに」という条件がついていないかというと、オーストラリアで最初に買い占めを始めたのは中国人だったからです(「一般に」ではなく、「自分の周りでは」だと思います)。つまり、中国人がトイレットペーパーの買い占めをしないわけではなくて、場所が違えば買い占めるのです。人の違いではなく、環境の違いであり、むしろ環境が違えば真っ先に中国人はトイレットペーパーを買いに行く。これは重要なヒントです。
その環境差とは何か。
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