スペイン風邪流行時のマスク写真—マスク・ファシズム[付録 1]-(松沢呉一)
スペイン風邪のオモシロ写真
何回か前に取り上げたスペイン風邪がナチスの台頭を促進したかもしれないという調査は重要な意義があって、今の時代を解釈するにも大いに役立ちます。ヨーロッパの国でさえもマスクを強要する。日本でも、譲ってはいけない一線をあっさり超えてしまう主張をする人々を見た時に、ウイルスは全体主義を招くと思わざるを得ません。
そこで、遅れてスペイン風邪のことも調べています。あの時はマスクはどうしていたんだろうと写真を眺めていたのですが、面白いんですよ。
撮影用に奇妙な小道具を作ったか、映画のスチールかとも思ったのですが、別の場所で別の人が同じものを使っている写真があるので、実用化されていたようです。あのラジオみたいなもので濾過するのでしょう。
「一人で読書する時にどっから感染するのか」って疑問もありますが、学校であれば、誰かがその辺にウイルスを残していくことはあります。口に当てる部分に前の人の唾液が残っていると高確率で感染するので、あの部分は個人で持ち歩くのです。知らんけど。
あの機械自体が汚染された場合はどうするかと言えば、皆で感染します。
ヒジャブのようなマスク
次のオモシロ写真。
NSW in 1919 implemented some of the strictest forms of health initiatives such as quarantine, the mandatory use of face masks, and a ban on public events.(Supplied: State Archives And Records NSW)
ムスリムの看護師さんたちかと思いましたさ。これはオーストラリアのabc newsからなのですが、この記事によると、オシャレなんですってよ。
以下も同じ記事から。
Face masks as both function and fashion are part of pandemic responses 100 years apart.(Supplied: National Museum Of Australia)
数回前に派手なアフリカのマスクを見ましたが、無味乾燥な白いマスクはつまらんので、いつの時代でもたかがマスクでオシャレをする人たちがいます。
たぶん当時のオーストラリアでは、エキゾチックなイメージをここに求めたのではないでしょうか。防疫効果はなさそうですけど。
これを見て、「あ、フランスのライシテ、ピンチ」と一瞬だけ思いました。フランスでは学校にヒジャブを持ち込んではいけません。だったら、このマスクは?
しかし、以前説明したように、フランスのライシテは、教育現場を含めた公的場面に個人にまとわりつく宗教や思想を持ち込んではいけないというものであり、マスクがいけないわけではありません。必要があって顔を隠すことがいけないわけでもない。よって予防用のマスクは問題なし。怪我をした時に包帯をつけるのと同じで、宗教、思想と無関係。
しかし、予防用のマスクを超えて、それがただのオシャレであっても、宗教的表示になるとアウトでしょう。本人がムスリムじゃなくても、ヒジャブを思わせるようなマスクは禁止でいいのです。怪我をして、他人から見えるような場所に絆創膏でハーケンクロイツの形にしたらアウトなのと同じ。ナチス支持者じゃなくてもアウト。
普遍主義にとってはそんなに難しい問題ではありませんでした。
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