まだ少しは地球と人類に希望があるのかもよ—IPCC(国連気候変動に関する政府間パネル)の「第6次評価報告書」-(松沢呉一)
「フレッド・グテル著『人類が絶滅する6のシナリオ』より」シリーズとストレートに関わる内容ですが、あっちの流れとはズレるので、独立させ、カテゴリーだけ残しました。
IPCCが警告する地球の危機
ちょうどこのタイミングで「IPCC第6次評価報告書」が出ました。読もうかと思ったのですが、無理でした。
1,000ページ以上ある上に、論文を集積したものなので、私が理解できるようなものではありませんでした。
でも、大丈夫。暫定版ですが、気象庁が要約を出してくれています。
「チクショー、先生の言っていることが何ひとつわからない。また期末テストは赤点かよ。とりあえず寝るか」と絶望的な劣等生気分から、「頑張れば、卒業できそう」という気分を味わえました。
さらにこの中のポイントについては以下がわかりやすい。
2021年8月10日付「Yahoo!JAPANニュース」/竹村俊彦「IPCC第1作業部会第6次評価報告書のポイント」
親切な解説です。
「どれを読んでも、人類がいつ滅びるのかわかんねえよ」という不満もありましょうが、専門家はなかなかそういうことは言ってくれません。とくに気象という分野は複雑な要因が複雑に絡み合うので、慎重にならざるを得ないし、それよって人類がどうなるかは気象とは別分野の知見が必要です。そういった知見を総動員したところで、この先何が起きるのか、正確なことは誰もわからんでしょう。
正確なことはわからないながら、このまま何もしなければ数十年内には、多数の陸地が消え、土地の消失と気温上昇で多数の住民が移住を強いられ、多数の農地が砂漠化し、多数の人が飢えて死に、食料確保のために多数の紛争が起き、多数の人が死に、多数の人が難民化することは決定。
今すぐに最善の対策を実現したとしても、そうなる可能性は十分ありますし、どうやっても当面気温は上昇しますから、どこかでティッピンクポイントを超える可能性、あるいはすでに超えた可能性もあります(ティッピングポイントについては「なぜ私の顔ではヘルペスが頻発し、地球では山火事が頻発しているのか—フレッド・グテル著『人類が絶滅する6のシナリオ』より[1]」参照)。
「地球温暖化は人為的なものではない」なんて論はすでに無効
竹村教授は「(異常気象は)人類が引き起こしていないという科学的知見は、査読論文による積み重ねがありません」と書いています。地球温暖化について、「今までも繰り返されてきた気温変化のサイクルに過ぎず、人間が排出したCO2のためではない」と言っている科学者はいて、今なおそれを信じている人たちも決して少なくないのですが、もはやそのような論が入り込む余地はないと言っていい。
今から20年くらい前になると思いますが、この頃までは私も地球温暖化について読んでいまして、どっかの誰かが武田邦彦氏の著書(新書だったと思います)を推奨していたために読んでみたら、ひどい内容だったので、インターネットだったか、メルマガだったかで批判したことがあります。
内容は覚えているのですが、書いていないことを書いたことにしてはいけないと思って検索したら、いっぱい指摘している人たちがいました。
たとえばこちら。
北極の氷が解けても水位は上がらないと武田氏が主張しているって話ね。北極の氷が溶ける時にはグリーンランドの氷も溶けるっちゅうに。
けっこう売れていたんじゃないかと思うのですが、こんなんを信じてちゃダメですよ。こういうものに食いつきたくなる気持ちもわかるんですけどね。地球の必然的現象であれば何もしなくていいし、自分には責任がなくなります。地球温暖化で騒いでいる人に対して、冷静なポーズもとれます。クールな俺様。武田邦彦のデタラメも見抜けないマヌケなクール。
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