松沢呉一のビバノン・ライフ

コロナ禍の化粧調査とゆにばーす・はらちゃんの化粧—唇が物語る[9]-(松沢呉一)

誰のために口紅をつけ、誰のためにネクタイを締めるのか—唇が物語る[8]」の続きです。

 

 

コロナ禍の化粧

 

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新型コロナによって変化した化粧についての意識と実際についての調査はいくつかあるのですが、以下は昨年6月に公表されたポーラ化粧品の調査。

 

2021年6月30日付・ポーラ文化研究所「ウィズコロナ時代の化粧意識・行動分析 コロナ前後で化粧はどう変わったのか?

 

 

コロナ禍では「マスクをするために口のメイクはしなくなって、目の周りだけになった」「在宅勤務になったので、メイクをしなくなって、リモート会議がある時だけする」「飲み会がなくなったので気張って化粧をすることがなくなった」なんて話を昨年はよく聞きました。

そういった個人個人の事情をカネボウが数値化してみたら、今まで見えにくかったところが見えてきました。

私は「化粧の負担が軽くなってよかった」と考えている人たちが圧倒的に多いと思っていて、それも数字には出ていますが、逆の人たちもいるのです。

顔・美容面におけるマスク生活の影響」についての質問で、「マスクでメークが落ちる」(29.8%)、「肌荒れする」(18.9%)といったようにマスクをすることでの弊害を挙げている人たちが多数います。メイクが落ちるんだから、マスクで隠れるところはメイクしなければいいと思ってしまうのですが、食事に行ったり、お茶を飲んだりする時はマスクを外します。そん時に、「半分スッピン」はまずいってこともありそうですし、つねに全部ビッチリしておかないと落ち着かない人たちもけっこういるようです。

化粧しなくなったことに対しては「メークの手間がかからない」(26.2%)、「メークをしないことで気分が楽になる」(12.7%)と肯定的にとらえている人が多数。

そこまではわかるとして、少数意見でありつつも、「メークを楽しめない」(10.9%)、「メークが思うようにできず気分が上がらない」(5.1%)、「心がたるみそう/心の緊張感がなくなる」(4.8%)という人たちもいます。メイクをすることに喜びなり意義なりを見出している人たちです。「化粧は自分の楽しみ」ってことですが、この楽しみは自分一人では完結しない。第三者の視線が必須です。

メイクをするのが純然たる個人のもの、自分自身で満足すれば事足りるものであれば、誰に見せることなく自宅でメイクをすればいいのですから、多かれ少なかれ、他者の視線を意識していることをよく見せてくれています。

こういう人たちはコロナ禍が早く終わって、以前のように化粧をして出かけたいと渇望していることも数字に出ています。

 

 

化粧とマスクとサングラス

 

vivanon_sentence決して多数派ではないにしても、化粧に積極的な意味合いを見出しているのがいます。この積極性にもいろんなタイプが含まれていると思います。

たとえば自分の素顔を晒すのが怖い人たちです。「ビバノン」のどっかに書いてますが、コロナ騒動の前に、「若い世代でマスクをつねにつけているのがいる」という話を聞きました。男でも女でも、「自分の素顔をすべて見られるのが怖い」ということらしく、顔の一部であっても隠せば安心できる。

つねにサングラスをしている人の心理と重なりましょう。「目を出しているより隠している方がカッコいい」という人もいましょうけど、「自分がどこに見ているのかを悟られるのが怖い」というのがつねにサングラスをする人の典型的心理とされます。

 

 

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