ロシアの化学工場や軍の研究施設で相次ぐ火災—ただの火災? ウクライナ軍の新たな反撃? 国内反プーチン勢力によるレジスタンス?-(松沢呉一)
「ウクライナ戦争」シリーズとしては「戦死したロシア兵のプロファイリング—ロシア兵の正体[上]」の続きですが、内容は「プーチン体制に異を唱えるロシア人の動きが活発化—オリガルヒから火炎瓶まで」からつながってます。
冒頭に書いている「ロシアの戦艦アドミラル・マカロフがネプチューンで沈没か」って話は誤報だったよう。詳しくは「ロシアのために数千万人が餓死しかねない—泥棒国家ロシアはホロドモールを再現しようとしている」参照。
またもロシア戦艦が沈没か?
いい朝です。
この報道が日本で出る前に「メデューザ」で見ていたのですが、「メデューザ」ではただフリゲート艦としか出ておらず、「アドミラル・マカロフ」であることは日本の報道で知りました。
「モスクワ」沈没以降も、小型の偵察艦はドローンで攻撃してましたが、「モスクワ」以来の収穫でしょう。ウクライナ・メディアもすでに「アドミラル・マカロフ」と断定していて、巡航ミサイルを撃てる分、「モスクワ」よりも重要な意味を持つと言ってます。
黒海艦隊が早く全滅しますように。
さて、今回はこういったわかりやすい戦闘の話ではなく、もう少しわかりにくいところで闘いが展開しているかもしれないというお話です。
「ビバノン」でのウクライナ
振り返ってみると、とくにウクライナに強い思い入れがあるわけでもないのに、戦争のずっと前から、「ビバノン」ではウクライナをたびたび取り上げてきました。
リヴィウ・ポグロムだったり(ホロコーストの流れ)、ホロドモールだったり(これも同じ)、アゾフ連隊を筆頭とするウクライナの右派運動だったり(「ポストコロナのプロテスト」シリーズ)、ゼレンスキー大統領だったり(これも同じ)、Jinjerだったり(デスボイスの流れ)。
すべてたまたまであって、ウクライナへの興味が先行していたわけではないですが、これらによってちいとは準備ができていたので、戦争になっても人名や地名で慌てることがなく、すんなり事態を把握できました。なんでもかんでも深堀りしておくと役に立つことがあるってもんです。
もうひとつ今回、深堀しておいてよかったと思ったことがありました。クーデターです。
なぜナチスドイツではああも多数のクーデター計画が持ち上がったのか、多数持ち上がったのになぜ1944年7月20日まで実行されることがなかったのかを私なりに分析していたので、今回、「クーデターでプーチンは倒れる」と安直に予想したり、暗殺を待望していた人を冷ややかに眺めることができました。「発作的にピストルを出す個人が出ることはあり得ても、組織的、計画的クーデターは起きにくい」と。同じ独裁でも、ナチスドイツとロシアでは構造が違うのです。
私と同じアプローチでクーデターが起きにくい構造を指摘している人を見つけてなかったのですが、以下に出てくる武藤喜一・元テレビ朝日モスクワ特派員がその点をはっきり見据えています。
プーチン政権の幹部たちはことごとくが甘い汁を吸っているので、この体制を変革すると自分が損をします。「プーチンがやっていることは不正だ」と感じるような正義感など最初から捨てている人たちです。捨てられなかった人は生き残っていない。
一見いい人に見えることもありましょうけど、つま先から頭まで全身が腐っていて、 自分の利益のために汚職や暗殺を肯定する人々です。決して見間違えないように。
もうひとつ重要なポイントがあります。
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