戦勝記念日のパレードに相応しいBGMを選んでみました—ショートパリス/Noize MC/ノグ・スヴェロ!-(松沢呉一)
「U2のボノとジ・エッジはキーウのシェルターへ—「戦勝記念日のパレードよりやるべきことがあるだろ」と政府に楯突いたロシアのラッパー、モルゲンシュテルンはUAEへ」の続きです。
ショートパリスと退役軍人合唱団のコラボ反戦曲
ラッパーのOxxxymironもFaceもモルゲンシュテルンも国外に脱出。ラッパーの場合は身軽ってこともあるんでしょうけど、プッシー・ライオットのメンバーの何人かも今回ジョージアに脱出。
しかし、プッシー・ライオットのマリアはなおロシアに残って闘っていますし、ロシアに残ってプーチンに楯突いているバンドはいくつかあります。逃げて闘うもよし、残って闘うもよし。
ショートパリスはサンクトペテルブルク拠点のバンド。
ロシアは昔っから王道のバンドが多くて、邪道のバンドは少ない。ここで言う邪道は「前衛的」「実験的」「アンダーグラウンド」「オルタナティブ」「ヘンテコ」といった意味ですが、私は邪道が好きですから、今回知ったこのバンドは思い切り好きです。
このApple Gardenという曲は、退役軍人合唱団F. M. コズロワとのコラボ。F. M. コズロワは1975年に結成され、数々の賞を受賞している歴とした団体です。王道。
この曲は歌詞を読んでも何を歌っているのかよくわからず。イタリア語なので、ロシアの人たちもわからんでしょう。映像を観てもわからんですが、思い切り「反戦歌」と銘打っています。
退役軍人の中には「自分の代で戦争を終わらせたい」と考える人たちも多くて、F. M. コズロワの人たちもそうじゃなかろうか。ロシアにはプーチンに反対している退役軍人のグループもありますし。いかに「反戦歌」であっても、退役軍人たちが参加しているので、摘発しにくいでしょう。
この曲は3月11日にリリースされ、翌日にこのPVが公開されているのですが、その数日前に反戦集会でヴォーカルのニコライ・コミャギンが拘束されています。
Noize MCが歌うアウシュヴィッツ
YouTubeがオススメしてくれたのがNoize MCことイワン・アレクサンドロヴィッチ・アレクセフです。
もともとバンドをやっていましたが、大学に入って一人になり、ラッパーとして活動。ヒップホップスタイル、バンドスタイルを使い分け、このライブのようにギターを持って一人でやることも。
彼は筋金入りのプロテスターで、2011年には作家のボリス・アクーニン(その後亡命)らとともに反戦デモで演説。ロシアがクリミア半島に侵攻した2014年にはウクライナ側に立って演奏。リヴィウのコンサートではウクライナ国旗を掲げ、ロシアに帰国して以降は当局からの圧力で、次々とライブがキャンセルとなり、コンサートを実施しても、警察が根拠のない麻薬捜査を口実に介入。
それでもロシアにい続けながら、ウクライナ戦争が始まって以降は、ワルシャワやベルリンの反戦イベントに参加しています。
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