松沢呉一のビバノン・ライフ

カンパが無税になる要件をめんたちゃんに学ぶ—彼女がColaboやその支持者を批判する理由-(松沢呉一)

 

カンパが無税になる要件

 

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カンパは年度内に目的通り全部使えば無税だとなんとなく思っていたのですが、もっぱら税務についてWBPCの批判を続けているめんたちゃんねるの以下の動画でやっと無税になる要件がわかりました。正確に知らない人が圧倒的に多いはずなので、観ておくといいです。

 

 

カンパが無税である根拠は相続税法基本通達にあって、「社交上の必要によるもので贈与者と受贈者との関係に照らして社会通念上、相当と認められるもの」という文言はあまりに茫漠としていて、なおかつ判例の蓄積もないため、税務署に問い合わせても、確たる回答は得られず(内容にもよりますが)、込み入ったケースでは税理士でも意見は分かれがちなようです。

この通達で具体的に挙げられている例は「個人から受ける香典、花輪代、年末年始の贈答、祝物又は見舞い等の金品」です。金品が過剰じゃない限り、これらが「社会通念上、相当と認められるもの」とされて非課税なのはわかりやすいですが、この通達でカンパまでを含めるのはそもそも無理がないか? 含めてはいけないのでなく、規定がアバウトすぎるってことです。国税庁はもうちょっと細かな基準を出して欲しいものです。じゃないと社会通念が身についていない私には判断ができません。

めんたちゃんも「私はこう思う」と私論を述べることができるだけですし、以下、私が書いていることはめんたちゃんの受け売りを私なりに解釈しているだけですので、カンパを集める際、クラウドファンディングを始める際には事前に税理士さんに相談した方がいいですね。それでも課税されることがありそうですが。

この回はあおちゃんぺさんが集めたカンパに対する解説です。あおちゃんぺさんの場合は「複雑で、判断が難しい点が残る」に留まるのに対して、このあと問題になった小杉沙織さんの件は限りなくアウトです(返金することになったので、滞りなく履行されれば回避されるわけですが)。

 

 

カンパは地獄の一丁目

 

vivanon_sentence小杉さんの件をまとめたのがこちら。

 

 

私はうちわマニアなので、訴訟のうちわが欲しい。

小杉さんの件はもう触れない予定でしたが、カンパの課税についての教訓的なサンプルなので、改めて取り上げておきます。

ここで語られているのはあくまで税金の問題。道義的な問題はテーマではないのですが、道義的に疑問を抱かれる箇所は社会通念からの逸脱に重なりやすいので、税務上も危ういと言えそうです。

WBPCの悪行を暴露することを前提にして訴えられるかもしれないので「金をくれ」というカンパが「社会通念上、相当」と認められることもあろうかと思います。公益性があるのだと。暴露をして訴えられたら、そうする理由があったことの証明にもなりますが、訴えられるはずの暴露をしていないのですから、ただ単に「金をくれ」として金を集めただけ。

また、暴露したけど、訴えられなかったとなると、そもそも拙速な金集めだったことになり、浮いた金をどうするのかってことにもなるので、そうする必要が生じてから集めるのが無難です。暇空茜の場合は、いくらあっても全部使い切るでしょうけど、あれは異例。

まして、「自分が代表の団体に寄付します」となったら、贈与税がかかってくるだろうというのがめんたちゃんの見解。

そもそも団体の運転資金と言ったって、たいていは人件費ですから、実質的には「身内で山分けする」ということになりそうです。課税されて当然。

若者メンタルサポート協会」には税理士がついているでしょうから、課税されることをわかった上でそうしようとしたのかも。税金でもっていかれても十分残るという計算。なんも労力も経費もかかっていないんですから、ちょっとでも残ればめっけもん。

 

 

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