松沢呉一のビバノン・ライフ

日本語よりも日本のルールとその原理を理解することの方が外国人には難しいかも—「あしや提案」とフランスの暴動から考える[前編]-(松沢呉一)

入管法改正についてこれまで一度も触れてこなかった理由—「外国人をどう受け入れるか」は本当に難しい」の続きです。

 

 

帰化に関するあしやさんの提案

 

vivanon_sentence予想に反して帰化が認められなかったロシア人YouTuberのあしやさんが、「帰化条件はもっと厳しくてもいい」と言い出しています。なんてことを。

 

 

納得しました。

具体的にはまず日本語です。現状、帰化のためには小学校3年生レベルの日本語しか求められないそうです。これは私も意外でした。

小学校3年生レベルの日本語ができれば、コンビニや飲食店で働くことはできるでしょうし、肉体労働もできるでしょう。

また、あしやさんが言うように、英語ができれば働ける会社もありますし、英語講師もできますが、どれだけ他の能力が高くても、小学3年生レベルの日本語で採用される会社は限られます。

つまり、今やっている仕事ができなくなった場合に、安定した仕事に就ける可能性は相当に低く、いかに母国語が堪能でも、小学生レベルの日本語では、通訳や翻訳の仕事は無理です。

個人事業主のあしやさんが不安定であるなら、それらの人々はもっと不安定です。

日本人であればアホの子でもたいていは中学卒業程度の日本語は使えるのですから、これを基準にするのが合理的かもしれない。

 

 

日本人の行動原理と風俗産業

 

vivanon_sentenceもうひとつ、あしやさんが言っているのは一般教養試験です。他の国では、言語以外に歴史や法律、文化、地理などの一般常識の試験があったりするのに、日本にはない。これもあっていいと同意します。

歴史や法律のように難しいレベルのことではないことこそ知ろうとしない分、わからないものです。例えば風習や作法のようなもの。

先週、在米英人監督によるドキュメンタリー映画のインタビューを受けました。

どうして日本では、風俗産業マーケットがこうも大きいのか」というテーマを中心に、「どうしてこうも店とサービス内容が細分化されているのか」「そこでは既婚者も働いていて、風俗産業で働くことや浮気をすることを日本の夫婦では許容しているのか」といった質問をされました(ここでの風俗産業は性風俗だけじゃなく、キャバクラなどの風営法上の接待業種を含みます)。

私はこれらすべては日本人に共通する行動原理に基いていると説明しました。ルールが細かく厳密であり、日本人はそれに従うのがもっとも重要な行動原理だと。それがどう風俗産業や浮気とつながるのかわからんでしょうけど、監督の疑問に対して、他の誰もできていない日本の仕組みを見せられたと思います。それだけが正解ではないでしょうが、「女性が虐げられているからだ」なんてことを言いたがる人たちに比べると、数段説得力があったはずです(そういうタイプの人たちにもインタビューしたようです)。

どうせ全部使われるわけではないし、もしかすっと全部ボツになるかもしれないので、「ビバノン」で改めてまとめようかとも思いますが、こういう日本の仕組みは教えられる機会がなかなかない。日本人だって、こんなことを日々考えている人は少ないでしょうし、その仕組と風俗産業との関係を説明した本も出ていないでしょう。

※以下に埋め込んでいるカチョックTVに出てくるノルウェー人観光客の日本イメージ

 

 

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