松沢呉一のビバノン・ライフ

リビアの洪水で万単位の死者が出そう—世界の洪水発生数は増えているのか?-(松沢呉一)

 

リビアの洪水による死者は2万人に達する見込み

 

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フランスの買春者処罰についてのシリーズで、北アフリカ出身のギャング団が登場したタイミングに合せるように、モロッコでは地震、リビアでは洪水が起きて、とくにリビアの被害が凄まじい。

 

 

ここでの死者数は5,300人になってますが、あっという間に6千人を超えていて、行方不明者は数千人から3万人という数字が出ています。控えめに言っても死者数が万に達することは間違いなく、リビア当局は2万人に達するとの見解を発表しています。東日本大震災並み(2万2千人)。

死者が二桁になると、相当に大きな洪水というのが私の感覚です。万の死者がいかに大きいかわかりましょう。今年の中国の洪水では公式発表で死亡者300名、実際には数千人が亡くなっていると見られますが、それをも上回ります。

中国では1931年に記録的大洪水があって、少ない見積もりでも死者14万人、最大の見積もりでは400万人と言われます(洪水に伴う感染症や餓死による死者を含まず)。それには遠く及ばないとしても、リビアの洪水は今世紀最大規模でしょう。

現地では遺体がそこら中にあって、海にも流れ出しているために回収が困難になっていると報じられています。

地震も怖いけれど、洪水は感染症が広がるリスクがより高い。その上、リビアは内戦中です。対策がとれにくく、国外からの救援も入りにくい。戦争はもうやめとけと思いますが、この洪水で戦いを有利にしようと考える人たちもいるんでしょう。

日本の報道はどれもそうなのですが、リビアについては、よくある「濁流が家を飲み込み、車を押し流していく」といった様子がわかる映像が見られません。どうしても見たいわけではないのですが、どれだけ破壊力のある洪水だったかがイマイチわからないのです。

国外メディアでは少しは出ているのですが、深夜寝ている時にダムが決壊して瞬く間に流された人たちが多く、光源がなく、高台や高いビルが少ないため、うまく撮れなかった模様です。

 

 

地中海沿岸は人が住めなくなる

 

vivanon_sentence地中海と言えば熱波と山火事ですが、海温上昇によるメディケーンで洪水被害が加わって、「地中海沿岸は人が住めなくなる説」が信憑性を増しています。

今回のメディケーンはダニエル(Daniel)と名付けられて、ギリシャでダニエルに殺されたのは「少なくとも3名」と報じられていています。

トルコやブルガリアでも被害が出ています。トルコは例年のことですが、ブルガリアの洪水はあまり聞かない。

 

 

死者は少なくとも12名。けっこうな被害ですが、リビアの前には霞みます。リビアではダムが決壊したことが被害を大きくし、洪水が多い地域ではないので、対策がなされていないのだと思われます。

それにしても、内戦中のリビアでも正確な数字が発表されているのに、災害被害者の正確な数さえわからない中国はいかに野蛮か、です。中国を信用するのは無理な話。

 

 

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