リビア東部はヨーロッパへの密航拠点—リビアの洪水と難民問題[上]-(松沢呉一)
数字をごまかす中国と違って、正確な数字を出せないリビア洪水
リビアの大洪水をその後もチェックしてますが、こんなん、ありか。
1万1千人から7千人も減って4千人に。
2023年9月18日付「ALJAZEERA」によると、集計の問題ではなく、OCHA(国連人道問題調整事務所)の担当者の聞き違い、あるいは勘違いのようなものらしい。また、リビアの赤十字社は1万1千人と言っていたので、OCHAのミスってだけではないのかも。
同記事によると、決壊したダムは20年以上前から亀裂が見つかっており、2012年と2013年に修復費として200万ドル以上の予算が出ていたのに修復されておらず、どっかに金が消えたらしいです。アフリカ諸国ではよくあることです。
国外からの災害援助金も現地には届いていないようです。ここは中国と一緒。
この災害は人災であるとして、抗議行動が起きており、市長の家に火が放たれています。
こうなる前に抗議すべきでした。
リビアの国内難民と国外難民
洪水で避難した人は4万6000人。避難した人、してない人を合わせ、緊急で援助が必要な人は10万人。飲用水の確保ができず、大規模ではないながら、泥水を飲んで食中毒で亡くなった子どもや、感染症に罹った子どもがすでに出ています。遺体が浮いていたような水でしょうからね。
行方不明者の数もさまざまで、そもそもその地に何人いたかもわかってないのだと思います。というのも、リビア内戦の国内難民が20万人程度いて、その多くはトリポリを中心とした西側にいるので、洪水とはあまり関係ないのですが、国外からの難民が少なくとも30万人いて、そのうち23万人が東部にいます。
国内難民は内戦によるものとして、国外難民がそうもいるのは、リビアはヨーロッパ渡航の中継地点だからです。北アフリカ諸国のみならず、サハラ以南の諸国、さらにはアジアからも来ています。
これも「ALJAZEERA」の映像。
この映像を観ると、船が沈没して死んでしまう人たちもいて、同情を禁じ得ないですが、船に乗れただけまだマシです。詐欺ブローカーに金だけ騙し取られる人たちもいます。300ドルとか500ドルかかるわけで、その金額を払える人たちが船に乗ったり、騙されたりしています。
その金がない人たちは、UNHCRに登録して、リビアの収容施設で、受け入れてくれる国が出てくるのを待つか、祖国に戻れる日を待つしかない。この収容施設の管理は民兵がやっているのですが、環境が劣悪で、コロナに感染して亡くなった人もいます。栄養不足が続き、ちょっとしたことで亡くなる。また、民兵によるレイプ、暴力は日常茶飯事らしい。
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