松沢呉一のビバノン・ライフ

イタリアのランペドゥーザ島に3日で7千人のチュニジア人が漂着—リビアの洪水と難民問題[中]-(松沢呉一)

リビア東部はヨーロッパへの密航拠点—リビアの洪水と難民問題[上]」の続きです。

 

 

リビア、チュニジア、イタリア、ギリシャの攻防

 

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ヨーロッパの国々は困り果てていて、リビアやチュニジアの政府に船を出航させないよう要請し、その資金援助もしています。沿岸警備隊は船を発見すると連れ戻していますが、相当に手荒く、沿岸警備隊によって沈没させられることもあり、沿岸とは言え、陸から何キロも離れているため、溺死者も出ています。泳げない人もいるし、時に赤ん坊もいますからね。

以下は2年前、難民船を銃撃しているリビアの沿岸警備艇。

 

 

このあとどうなったかわからないですが、止まろうとしないので、威嚇射撃も体当たりもやむを得ないでしょう。沈没したら、救助は必須として。

 

 

ドイツは受け入れ拒否

 

vivanon_sentence運よく地中海を渡れても、イタリアやギリシャの沿岸警備隊が待ち構えています。捕まえないと、どっかに上陸して不法入国します。追い返すこともありますが、素直にリビアに戻るはずはなく、別の場所に上陸するだけ。それでも、せめて他国に行って欲しいのでしょう。

捕まったら、結局は難民の施設に入れられます。UNHCRは各国に受け入れを要請していますが、以前は積極的に受け入れていたドイツやフランス、スウェーデンももう限界。

今ままでドイツはイタリアやギリシャの難民収容施設に人員を派遣して、難民認定した人々だけを受け入れていたのですが、現在は受け入れを完全停止中で、審査もストップしています。これは密航の難民についてであり、大使館に駆け込む正規のルートは別だと思います。

ギリシャに上陸して北上し、東ヨーロッパから陸路でドイツに密入国するのが年間万単位いるため、「イタリアに着いたのはそっちで分担しろ」ってことです。ドイツやフランスに比すと、イタリアがこれまで受け入れた数は少ないため、「もっと受け入れろ」というのがドイツの言い分。

イタリアからすると、「今までドイツやフランスが受け入れてきたため、イタリアに行けばなんとかなると思わせてしまったのだ、責任とれ」ってことです。

事実、イタリアに着いた密航者たちは揃って「フランスかドイツに行きたい」と言ってます。「どうしてもフランス」「どうしてもドイツ」ではない点も、彼らの特性を見せています。いい生活ができて、受け入れてくれる国、ないしは不法に入り込める国ならどこでもいい。これだから、その国の文化、風習、言語なんて理解しているわけがない。

こういう人たちが「リビアに行けばヨーロッパで生活できる」とリビアに集まってきて、リビアに停滞する一方です。リビアでの生活環境は悪化し、だからいよいよ命を賭けてヨーロッパを目指す悪循環です。

UNHCRは「リビアに行ってもヨーロッパに定住はできない」と呼びかけていますが、ヨーロッパの国々が夢を見せてしまったことの余波が続いていて、なおかつその数が増えているのです。

 

 

密航をサポートする団体?

 

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上の動画を出しているのは英Telegraphのチャンネルですが、いつあんなことが起きるかわからないのにTelegraphがヘリまで出して取材しているとは思えず、誰が撮影したんだろうと疑問に思いました。

以下の動画で答えがわかりました。埋め込みができないので、YouTubeに遠んでください。

 

 

2年前のオーストラリアABCの番組です。

 

 

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