松沢呉一のビバノン・ライフ

日本テレビに忖度した(?)田中東子・東京大学大学院教授のコメント—ジャニーズ時代の終焉と新時代の幕開け[13]-(松沢呉一)

日本テレビが解決にならない対策案を打ち出した事情を推測する—ジャニーズ時代の終焉と新時代の幕開け[12]」の続きです。

 

 

なんでこうなるかな

 

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ここまで見てきたように、日本テレビの検証は、とくに「今後の方針」において疑問がありますが、おそらくこれを観た人の大半は疑問を抱かず、むしろ「よくやっている」と感じた人も少なくないと想像します。

その印象を強化する役割を果たしたのが田中東子・東京大学大学院教授のコメントです。各パートごとにコメントしており、パート1の後のコメントが以下。

 

はい、今のヒアリングからわかったことなんですけれども、性暴力の問題をやはり報じる価値のあるニュースとして捉えられずに報道してこなかったという点は今からきちんと検証していく必要があります。
そして、その背景にはやはりテレビ局で決定権を持つ人の中に男性が非常に多かったということ、この点が性暴力の問題というものを大したことではない些細な事件、些細なことであるというような、そういった判断をしてしまったのではないかなと考えております。
また、あの文春ですね、後追いの記事、後追いの報道とかではなくてあのその時にきちんとあの独自調査などをして別の角度から報じることもできたのではないかというふうに考えております。そうするとなぜそういったことが内部から報じる方に出てこなかったのかですね、そういったことについてもしっかりと考えてみないといけないのではないかと考えております。
また、報道においてはやはりですね。セクシャルマイノリティをバラエティなどでテレビでは面白おかしく扱うような傾向もありまして、こういった空気感などが男性による男性への加害という問題についてあまり重要視しないというような傾向に向かってしまったのではないかと思います。
はい、そしてですね、コメントというかヒアリングにありましたように、性加害の認識が低かったというような点もありましたけれども、他にもですね、つぶさに見ていくと人権侵害であるとか自動虐待であるというまた別の側面もこの問題は含まれておりますのでいろいろな側面から取り上げて報じることも本当であればできたのではないかというふうに考えております。

 

✳︎「あの」の連発は省略。「やはり」も同様の口癖で、意味はないでしょうが、そのままにしてあります。

 

 

ジャニーズ事務所の決定権はメリー喜多川や藤島ジュリーが持っていたのだが…

 

vivanon_sentence「今のヒアリングからわかったこと」は、一行目だけなのだと思います。もし全体にかかるのであれば、「いったいあんたは何を聞いていたんだ」って話。

テレビ局で決定権を持つ人の中に男性が非常に多かった」といきなり出てきます。「決定権を持つ人」は、法人としての決定権を持つ役員を指すのか、現場での決定権を持つプロデューサーを指すのかわからないですが、たしかにどちらも男性の方が今でも多いかと思います。

しかし、もっとも被害者からの告白を耳にする機会があるのは、女子アナではなかろうか。未成年のメンバーと酒を飲んで問題になったのもいましたね。女子アナの誰もがそうしているわけではないにしても、仕事を離れたところで呼び出して酒を飲む局員は女子アナ以外そうはいないでしょう。

アナウンス部のヒアリングもして、被害者から得た情報を上に報告したのに男性上司が相手にしなかったとの事実が出てきたら、田中教授の論が成立するかもしれませんが、アナウンス部のトップは女性であることがよくあって、性別は関係ないと思います。

実質的にジャニーズ事務所を取り仕切っていたのは、ジャニー喜多川の姉、メリー喜多川であったことは周知の事実であり、ジャニーズ事務所のもっとも名を知られるマネージャーはSMAPを育てた飯島三智さんでしょう。もちろん、藤島ジュリーも代表になる前から力を持っていたでしょう。以前から次期社長としてその存在は私だって知ってましたから。

ジャニーズ事務所は女性の力が発揮されやすい会社であり、そこを舞台にして起きたのです。田中教授は、こちらに対しては、また別の理由で説明するのかもしれないですが、「自分が損をしない選択をしたがる人間の特性は性別と関係がなく発揮される」と考えた方が自然です。

 

 

 

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