松沢呉一のビバノン・ライフ

日本テレビの検証では見えない問題点を見抜く—ジャニーズ時代の終焉と新時代の幕開け[10]-(松沢呉一)

「噂では知っていた」の嘘—ジャニーズ時代の終焉と新時代の幕開け[9]」の続きです。

 

 

日本テレビの検証

 

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このシリーズは長くなってしまって、そろそろまとめに入りたいのですが、TBS以外の検証番組にも触れざるを得ません。

10月4日に公開された日テレの検証はTBSの検証同様、不完全燃焼感が強く、「そうかなあ」と首を捻る点が多々あるのですが、ここで取り上げられている事実やコメントをつなぎ合わせていくと、番組が見せてくれる問題点や改善点とは別のところに私が考える問題点や改善点があることが見えてきます。

では、それを見ていきましょう。

 

 

検証された内容は3つのパートからなり、パート1は「1999年の『週刊文春』のキャンペーン報道と裁判を日本テレビはどう伝えたか」ですが、これを最初に持ってきたことにも意図があったろうと思います。

「週刊文春」に対してジャニーズ事務所が名誉毀損で訴えた裁判について、ジャニーズ事務所が勝訴した一審判決のみ報道して、一部名誉毀損を認めつつも、「セクハラ」に該当する事実があったと認定された二審と二審判決を確定させた最高裁判決は報道せず。

報道するかしないかの判断の差はその判決内容によるものだろうと思えます。担当記者は、はっきりした記憶はないようですが、「二審でも名誉毀損は認められたので報道する判断に至らなかった可能性がある」と語ったとのこと。つまりは、判決内容をしっかり検討しなかったということでしょう。

私の記憶では「週刊文春」を筆頭に、いくつかのメディアは、「セクハラ」の真実性が認められたことを報じていたはずですし、この前から告発本が出ていたのに、読んでなかったということか。ここは疑わざるを得ません。

 

 

報道局に対するヒアリングまとめ

 

vivanon_sentence報道局全体の姿勢のまとめ。

 

◉ジャニーズ事務所への忖度や事務所からの圧力は確認できず

◉週刊誌の芸能ゴシップだと軽く捉えていた

◉男性への性加害全般に対する問題意識が低かった

 

あくまで、これはヒアリングで出てきたコメントをまとめただけで、嘘だとしても疑問を挟むことなくまとめたものでしょう。

報道局が、芸能ネタとして軽視したのは理解できますが、それでも裁判となれば報道する価値がありましょうし、事実、一審は報じたのだから、二審以降を報じなかったことの説明としては弱い。

男性への性加害全般に対する問題意識が低かった」のもある程度理解はできます。さんざん書いてきたように、自殺、セクハラ、DV、国際ロマンス詐欺など、さまざまな事象において、男は軽視されていることと繋がっていて、とくに報道は、そこに働いているバイアスを自覚して解消していくべきであって、「男女のバイアス全般に対する問題意識」が今も低いのです。私も克服できていないですが、自覚はしています。

 

 

問題はそこにはない

 

vivanon_sentence伊佐治健・現報道局長もこれをなぞるように、「現在に比べて、男性への性加害に私たちは鈍感だった」と言ってます。こういうバイアスが世間一般にあるのは疑いのない事実だとして、もし相手が少女だったら、二審判決を報じたり、より深く掘り下げたかどうか。

 

 

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