松沢呉一のビバノン・ライフ

カナダ政府による香港人受け入れに見る「容認されるべき差別」—東中野「西太后」の「差別」貼り紙を検討する[1]-(松沢呉一)

 

くまのプーさんvs.中国共産党

 

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東中野の町中華「西太后」が「中国人お断り」の貼り紙を出し、在日中国人インフルエンサーたちが店を攻撃して営業もままらなくなります。これに対して店は、台湾人らのアドバイスにより、「香港独立」の貼り紙とくまのプーさんなどの貼り紙で共産党支持派や共産党に媚びて生きている中国人たちを撃退した話は、台湾の複数のテレビ局でも報じられています。

 

 

モザイクなし。超有名人になれて本望でしょう。

この件について、日本の大手メディアは報じていないようなので、詳しくは以下を参照して下さい。

 

 

私は店名を聞いて、すぐにピンと来ました。東中野駅のすぐ近くです。入ったことはないのですが、JRに沿って南側を走る道路の入り口にあって、駅からの近道である階段を降りたところの壁に「西太后」の看板が出ているので、店名を覚えてしまいました。

 

 

「チャイナウィルス予防の為」の文字を無視してはいけない

 

vivanon_sentenceこの記事では指摘していませんが、そもそもこのきっかけを作り出した中国人インフルエンサーの映像では、貼り紙にただ「中国人入店禁止」と書いているのではなく、その横に「チャイナウィルス予防の為」とあることが確認できます。

 

 

店を訪れて、店主に話を聞いた人たちによると、店主の妻が病に臥していて、そのため昨今中国で問題になっている肺炎を怖がっているとのことです。そこまではわからないとしても、貼り紙に「チャイナウィルス予防の為」とあるのですから、ウィルスを怖がっているのであり、また、中国人がそのウィルスを持ち込むのを怖がっていることは理解できるでしょう。

そのことを読んでいるはずなのに無視し、また、店に入って、店主は「病気を持っているから」と説明しているのに「中国人让我恶心(中国人は不快だ)」と字幕をつけて、日本語がわからない中国人相手にアクセス稼ぎ、金稼ぎを狙ったのが中国人インフルエンサーの正体です。あの男は、ウィルス対策であることを知られると都合が悪いことをわかっているくらいには知恵が働きそうです。

 

 

「容認されるべき差別」が存在していることを確認

 

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単に「中国人入店禁止」と書いているのと、「チャイナウィルス予防の為」と添えているのでは意味が全然違います。もし「中国人入店禁止」とだけ書いていたら、私はアウト判定したと思いますが、「チャイナウィルス予防の為」とあると容認せざるを得ません。

なぜこの両者は大きく違うのかについて説明していきます。なお、「チャイナウィルスという言葉は差別用語だ」なんて愚論については「武漢肺炎という言葉」シリーズにたっぷり書いてますので省略します。

まず「否定されるべき差別」と「容認されるべき差別」があることを説明します。まどろっこしい人は以降を飛ばして、次回から読んでください。

このテーマは今までも説明していますが、最近読んだ例から。

香港に帰らない決意をした周庭と中国政府の反応—香港人の受け入れ態勢を整えたカナダ」を書いた際に、香港人受け入れについてカナダ政府が説明しているページを読んでみたら、今までに履行されていた、香港人が長期の就労ビザ(おそらく5年)と永住権を取得する方法に加えて、二つの条件が加わったことが出ていました。

法改正によって、長期の就労ビザは過去5年以内に高等教育(これは大学や専門学校のことだと思われます)を修了している者が対象になってます。永住権は過去3年以内にカナダで大学または大学院を修了しているか、過去5年以内にカナダで1年以上の就労経験がある、国外の大学または大学院を修了している者が対象。

 

 

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