松沢呉一のビバノン・ライフ

警察が逮捕するとしたら中国人インフルエンサーたち—東中野「西太后」の「差別」貼り紙を検討する[4]-(松沢呉一)

利用を断っていいケース・断らなければならないケースが定められている業種—東中野「西太后」の「差別」貼り紙を検討する[3]」の続きです。

 

 

東中野「西太后」店主が張り紙を出した真意

 

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新宿109・KENZOの報告。

 

 

新宿109・KENZOの周りには、逮捕された私人逮捕系YouTuberがいますが、私がこれまで観た範囲で、彼自身は私人逮捕はしておらず、マルチ商法や投資詐欺などの通報止まりです。

その評価はここではどうでもいいとして、新中野「西太后」の店主が「妻が病弱なんで、疾患持ってるんで、病気の対策のために、新規できている中国のお客様はお断りしますっていう貼り紙出したんですよ」と言っています。

以前からの客は断らないことまではあの張り紙ではわからないですが、常連さんたちに貼り紙で伝える伝える必要はありません。「引き続き来てください」と直接言えばいいだけ。

中国で謎の肺炎が子どもらを中心に蔓延し始めたのはせいぜいこの3ヶ月のことですから、その前から日本に来ていた中国人は関係なし。

罹患者の2割程度は成人ですから、「年配の人が怖がるのはおかしい」とは言えない。むしろ、軽い症状で済む若年層より、基礎疾患のある高年齢の方が怖いのはCOVID-19と同じです。また、日本ではマイコプラズマ一択ですが、中国国内の報道ではそうはなっていないし、毎度のごとく中国が正確で詳細な情報を出そうとしない以上、不気味がるのは当然です。

「貼り紙の文言は十分ではない」となお言えるかもしれないですが、私は容認されていい貼り紙だと改めて思いました。

引き続きそのことを確認していきます。

 

 

「中国人お断り」は違法か?

 

vivanon_sentence上の動画でも説明されているように、中国人インフルエンサーが最初に東中野「西太后」を訪れた際、店主に「違法ですよ」と言っています。

客の利用を断っていいケースが法で定められている業種については、それ以外の理由で客を断った場合は違法ですが、それ以外は無条件に違法にはなりません。

国内法で見た時にはそうなりますが、「条約に照らすとどうか」には議論があります。条約は国家間の取り決めであり、それに基づいて国内法を整備する義務が政府にあります。ざっくり言って、「国民に効力を発するのは国内法であり、条約は直接には国民に対して効力を持たない」という考え方と、「条約自体、直接国民に効力を持つ」という考え方があります。これは、「国際法と国内法」の兼ね合いをどう捉えるかという議論です。

スパッと一言で割り切れるようなものではなく、国によって考え方は違い、私も十分に理解できていませんので、興味のある方は最高法規としての憲法のあり方に関する調査小委員会 による「「憲法と国際法(特に、人権の国際的保障)」 に関する基礎的資料 」をお読みください。

日本でも民事裁判においては条約を根拠とした判決が出てますので、その範囲では直接効力を発すると言えますが、条約を根拠に刑事罰が課せられることはなく、東中野「西太后」で警察を呼んでも、警察は動きようがなかったのは当然、警察としては、威力業務妨害や不退去罪などで抗議する側を捕まえるのが妥当ですから、その方向で動いていたようにも見えます。

納得できないなら民事訴訟を起こすしかない。

 

 

法務省が挙げている例

 

vivanon_sentence中国人インフルエンサーは、「違法じゃない」と店主に反論され、「法務省のホームページを見てください」と畳み掛けています。

では見てみましょう。

 

 

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