松沢呉一のビバノン・ライフ

誹謗中傷の責任をとるべき団体と個人—東京弁護士会とSpringにとって人権はあまりに軽い[後編]-(松沢呉一)

Spring「草津町フラワーデモに関する当団体の見解について」は東京弁護士会の要請だった?—東京弁護士会とSpringにとって人権はあまりに軽い[中編]」の続きです。

 

 

では、Springはどうすれば責任を果たせるか

 

vivanon_sentence

前々回、「黒岩信忠草津町長、草津町議会、草津町全体を誹謗した人々が今になって謝ったところで、「はい、そうですか。今後気をつけてくださいね」で済むはずがない」と書きました。

一般社団法人Springによる「草津町フラワーデモに関する当団体の見解について」にはこうあります。

 

性暴力の虚偽の訴えは、冒頭で述べました通り名指しされた方に対する著しい人権侵害行為 であると同時に、実際に性被害に遭われて勇気を出して訴えた方々に、社会から「嘘つき」のレッ テルが貼られ、実際の性被害の訴えが封じ込められてしまうことにつながる、絶対に許されない行為です。

 

「悪いのは絶対に許されない行為をやった新井祥子であり、私たちは騙された被害者だ」と言いたいのか、「それに同調したのはフラワーデモであり、Springはフラワーデモに連帯を表明したことがあっただけ」と言いたいのでしょう。実際、もっとも悪いのは新井祥子であることは言を待たず、刑事罰を受けることになるでしょうが、草津町を「セカンドレイプの町」とし、「草津温泉に行くな」と呼びかけた人々やその主張をそのまま掲載したメディアの方が草津町にずっと大きな被害をもたらしました。もし黒岩町長や草津町議会、草津温泉旅館協同組合、草津町住民らが名誉毀損で告訴すれば有罪判決が出るかもしれず、民事でも多額な賠償金の支払いが命じられましょう。

この重い責任が、あんな声明一つでチャラになるはずがない。

では、どうすればいいのか。

すでにいろんな意見が出ていて、「東京人権賞の賞金を草津町の寄付すべし」という意見を見ましたが、本来資格のない団体が受賞したのであり、受け取る資格のない賞金を草津町が受け取れるわけがない。これを受け取ったら、草津町がSpringのやったことを容認し、東京弁護士会がSpringに人権賞を与えたことも容認することになります。Springのことですから、虚偽の被害者を装った新井祥子やそれに同調したフラワーデモに成り代わって、「私たちは一早く謝罪し、草津町に受け入れられた」と主張しそうです。

この金を寄付するのであれば、Springは人権賞を返上し、東京弁護士会が返却された金を謝罪の意味で草津町に寄付するしかないと思います。東京弁護士会が授与を取り消す前に、自分らがやったことを心底反省した上で、自ら返上するしかない。

また、「現地に行って謝罪すべし」という意見もありますが、「草津温泉に行くな」と呼びかけた人々を二度とその地に足を踏み入れさせるべきではありません。

私としては、黒岩町長や草津町議会、草津温泉旅館協同組合、草津町住民らがフラワーデモやSpringに民事訴訟を起こし、損害を賠償してもらうのが筋だと考えます。東京弁護士会に、Springに対する訴訟のサポートを要請してはどうでしょう。もちろん、訴訟費用は東京弁護士会が負担です。この要請を蹴ったら、「誹謗中傷団体に賞と金を渡し、その被害者からの要請を蹴った人権無視の団体」と未来永劫語られ続けることでしょう。

✳︎草津温泉旅館協同組合のサイトより

 

 

Springの理事は前年度の東京弁護士会副会長

 

vivanon_sentence

裁判の結果もほとんど確定してますから、あとはこれらの人々の悪質さ、無責任さ、厚顔さを世に知らしめていくべきだと思います。

その意味で、東京弁護士会は素晴らしい仕事をしました。人権賞の授与で、所属弁護士の脱会や批判をものともせず、これらの人権を踏み躙る集団の存在を広く知らしめた功績こそ表彰もんです。その功績を無駄にしないため、広くこのことを知らしめましょう。

東京弁護士会が人権賞をSpringに授与したことは、同会が軽率で、人権に興味がないことを明らかにしたこと以外にも、社会に大いに貢献しました。今まで草津町で起きたことに興味のなかった人たちに興味を抱かせ、この事件を忘れかけていた人々の記憶を甦らせました。

私自身、Springのことをあんまり認識していなかったのですが、今回初めてサイトも見ました。

本年9月時点のSpringの組織概要

 

 

 

next_vivanon

(残り 762文字/全文: 2598文字)

ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。

ウェブマガジンのご案内

会員の方は、ログインしてください。

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ