松沢呉一のビバノン・ライフ

塩村あやか参議院議員の思考を読み解く—ホストクラブ規制を求める人々の薄っぺらさ[追加編3]-(松沢呉一)

塩村あやか参議院議員の呆れた言動—ホストクラブ規制を求める人々の薄っぺらさ[追加編2]」の続きです。

 

 

事実確認さえできていないのに法制化を求める塩村あやか議員と立憲民主党の危険

 

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前回見たように、法を制定するために必須なのはまず調査です。

ことによると、塩村議員は議員の特権を使って、長きにわたってコツコツとホストについての調査をした上で、法律を作ろうとしているのかもしれません。それだけで法律を作ろうとするのはなお軽率ですが、ろくに調査なんてしていないことは明らかです。

以下は2023年11月21日付「産經新聞」掲載「立民・塩村文夏氏、悪質ホスト「どう考えてもだます方が悪い」法整備の必要性に言及」より塩村あやか参議院議員の発言。

 

──歌舞伎町の売掛金制度の特徴とは

「銀座の会員制クラブにも売り掛け制度はあるが、あくまでも店と客の関係で成り立っている。歌舞伎町の場合はホストと女性客の関係になる。消費者契約法に基づいて売り掛けを取り消そうとしても、店が介在していないため、認められないケースがある。ホストは女性に色恋営業を駆使する。恋人同士の金銭問題とみなされ、警察から相手にされない場合もある。法律が適用されない所を抑えた犯罪スキームになっている」

 

銀座のクラブは一律に「店と客の間の売掛」であり、歌舞伎町のホストクラブは一律に「ホストと客の間の立て替え」だと思っているようです。しかし、金美館通りの藤村さんが言うように、両者の間に明確な線を引けるわけではありません。

ホストクラブにも売掛があり、それが焦げつくとホストが支払います。銀座のクラブでも同じで、現に私は、焦げついた売掛を肩代わりしたホステスに話を聞いたことがあります。

また、ホステスでも、客から借金をするのはいます。キャバクラ嬢や風俗嬢に金を貸した話は腐るほどよくあり、とくにコロナ禍ではよくあって、その実例を私も取り上げてました

仮に銀座のクラブは「店と客の間の売掛」が多く、歌舞伎町のホストクラブは「ホストと客の間の立て替え」が多いのだとしても、実質的に差はありません。

ろくすっぽ調べていないのか、わかっていてスッとぼけているのか、どっちなのかわからないですが、おそらくしっかり調べる気は最初からない。金美館通りの藤村さんのような、長らくホストクラブに通っている人、つまりなんら問題なく「ホス狂い」をやってきた人や今もやっている人に話を聞くか、問題を起こしていないホストクラブの経営者に話を聞けばわかることも聞いていない。そんな現実はどうでもいいのでしょうし、むしろ事実を知ることは都合が悪いのでしょう。

どこかで聞き齧った話をさも専門家かのように語る塩村議員のインタビューをそのまま掲載するメディアも困ったものです。

 

 

「悪質政治家被害対策推進法」を制定すべし

 

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ホストは女性に色恋営業を駆使する」とありますが、ホステスが色恋営業をやってないとでも言うのでしょうか。産経新聞の記者もそんなことを知らないはずがなく、どうしても「銀座のクラブと歌舞伎町のホストクラブは違う」という結論にもっていきたいとの思いが反映されています。

男が女の客に色恋営業をすることは許されない。女が男の客に色恋営業をすることは許される。

おそらく塩村議員と産経新聞はそう考えてます。女が男の客に色恋営業をすることは許されるため、こちらは問題のある行為として意識されない。

 

 

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