松沢呉一のビバノン・ライフ

迷惑系中国人とそれを批判する中国人を峻別すべし—東中野「西太后」の「差別」貼り紙を検討する[補足編4]-(松沢呉一)

銭湯で会ったスリランカ人との会話—東中野「西太后」の「差別」貼り紙を検討する[補足編3]」の続きです。

 

 

すべての差別をなくすと失われるもの

 

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あけましておめでとうございます。昨年中に出すものを出して、元旦くらい休もうと思っていたのですが、無理でした。

間が開いてしまいましたが、最後に蛇足みたいなものを出して、このシリーズを終わらせます。

公民館で「女性問題を考える会」が集会を開き、「参加者のプライバシーを守るために男性の方はご遠慮ください」とあったら、「税金で運営されている施設だから、公民館では差別的な参加条件の集まりに貸すわけにはいかない」という方針の施設もあっていいと思います。男は一律にプライバシーを守れないと決めつけ、女は一律に守れると決めつけているわけですから、あからさまな差別です。しかし、民間の会議室でやる分には文句をつけるべきではないでしょう。「容認されるべき差別」です。

あるいは、日本に避難しているウクライナ人たちが「ロシアの侵略戦争に反対する会」を結成し、「秘密漏洩を避けるため、ロシア人は入会することはできません」としたら差別か? ロシア人の中にもロシアが仕掛けた戦争に反対しているのはいくらでもいるのですから、一律に断るのは差別かもしれないけど、これも「容認されるべき差別」です。

これらと、中野「西太后」の貼り紙とどれほど違うでしょうね。つまり、客を選別することを徹底的に制限してしまうと、集会の自由や結社の自由を危うくするのです。

自由を放棄して、中国共産党を支持する全体主義者たちにはどうでもいいことでしょうが、私らは集会の自由や結社の自由は守らなければならないと信じています。

あるいは、気に食わない表現物に難癖つけて、公開質問状にも答えない全国フェミニスト議員連盟には理解できないでしょうが、憲法より、自分らの思いつきの方が上位にあると信じる、ああいう連中を除けば、私らは表現の自由も尊重しなければならないと信じています。

差別は良くない。しかし、憲法で定められた自由を制限すべきではありません。それを防ぐには、どこかで線引きをする必要があります。店舗における線引きをこのシリーズでは見てきました。ここに書いたことが唯一の正しい線引きではなく、当然、議論があるでしょうが、それぞれに、人種差別撤廃条約や、鉄道営業法などの国内法、小樽温泉入浴拒否裁判」のような裁判例を検討して考えをまとめておいた方がいいと思います。

✳︎以前から「神韻」の広告がYouTubeに表示されていて、あんまり興味がないので、一度だけ最後まで観て、以降は飛ばしていたのですが、今年も日本公演を前に広告が増えました。法輪功系のニュースメディアの最後に「神韻」のPRがくっついていて、よくよく見たら「CHINA BEFORE COMMUNISM」の文字があります。そっか、「神韻」も法輪功関係がやっているのか。「神韻」のポスターを店の入口に出している中華料理店もあって、台湾人か脱国した民主派が経営している店かも。これも魔除けになりそうです。

 

 

中国人が中国での差別に口を噤んで、日本の差別だけを非難するダブスタ

 

vivanon_sentence動画投稿で稼いでいる迷惑系中国人に対しては、くまのプーさん、ウイグルの旗、天安門事件の写真、法輪功のポスターなどを突きつける方法で十分ですが、今回、「西太后」に嫌がらせに来た中国人の中には、人種差別撤廃条約を口にしているのが私が確認しただけでも、2名いました。

それを持ち出す中国人には「中国も人種差別撤廃条約に加入しているんだから、ウイグルやチベットに対する弾圧をやめろ」「お前らの国の“日本人と犬はお断り”の店の方が人種差別撤廃条約に反しているだろ」と返すだけでもいいかとは思います。

中国が抱える差別問題に触れるのは怖いのでダンマリを決め込むくせに、文句をつけても捕まるわけではない日本の差別に過敏に反応するダブルスタンダードは私もむかつきます。

中国政府を批判するのが怖くて黙るのであれば、他国に対する批判も控えるべきです。これについては以前書いた通り

自分が勤める会社の悪事を改善しようと社内で提案して受け入れられない時に、内部告発する勇気がなくて、自分の心の中に留めることにする人もいるでしょう。クビになって、明日から生活できなくなるかもしれない。クビにならなくても、地方か、閑職に飛ばされて、嫌がらせを受け続けるかもしれない。それを覚悟して、内部告発する人を称えますが、できない人を私は責められない。

しかし、同じ彼が、他社も同じことをしていることを知り、それを批判し始めたら、「おい、お前の会社はどうなんだ」と突っ込みます。これぞダブスタ。

この場合は、自社の悪行に触れないこととバランスをとって他社についても触れないのがダブスタを避ける方法です。末端の社員であればさしたる責任はないにしても、責任がゼロではなく、その責任を放棄した以上、他者を批判する資格なし。

会社じゃなくてもこういうことはよく起きます。生活ができなくなるわけではないにしても、同じクラスターの顔色を見て批判を控えた人が、無関係の他者が同じことをしたら、猛烈に批判し始めるようなことです。

✳︎2年くらい前にアジア系料理店にこのポスターが貼られていました。これもおそらく法輪功関係だと思われます。

 

 

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