松沢呉一のビバノン・ライフ

内閣府「人権擁護に関する世論調査」から読む外国人に対する差別[下]—東中野「西太后」の「差別」貼り紙を検討する[補足編2]-(松沢呉一)

内閣府「人権擁護に関する世論調査」から読む外国人に対する差別[上]—東中野「西太后」の「差別」貼り紙を検討する[補足編1]」の続きです。

 

 

もっとも厳しいのは住むところが探せないこと

 

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前回に続いて、内閣府人権擁護に関する世論調査」についてです。

もし私が「日本に居住している外国人に関し、人権問題だと思ったことはどのようなことですか」と問われたら、何を選択するだろうと考えたのですが、まっ先に「アパートなどへの入居を拒否されること」を選びます。住む場所が見つけられないのは厳しいですから。

しかし、外国人が住む場所は大きく拡大していることが想像できます。時々通りかかる場所にもありますが、外国人専用アパートが増えています。私が見かけるアパートは日本語学校が経営しています。外に表示が出ているので。そこは3階建てですが、千駄ヶ谷や原宿周辺に大きな物件を複数見てます。

外国人専用とは限らないですが、シェアハウスも増えています。

また、オリンピック目当てで、小さなホテルやゲストハウスができて、長期滞在している人もいます。

山谷や釜ヶ崎の安宿に住んでいる外国人もいます。

以前観た動画。

 

 

冷暖房なしの部屋だと1泊1,700円。長期割引があるようで、1ヶ月3万5千円。いろんな人が出入りしていて、楽しそうです。

ここもそうであるように、安宿はシャワーしかなかったりしますが、銭湯が近ければ問題なし。山谷にも銭湯があります。

こういう場所特有のトラブルもあるでしょうが、対応には慣れてましょう。今は、インターネットでさまざまな物件にアクセスすることが容易ですから、バルコニーが欲しいだの、オートロックがいいだの、高層マンションがいいだのといった要望がない限り、わざわざ敷金礼金を払って住む必然性は少ない。

 

 

女性専用アパートやマンション、女子大の存在をどうして容認しているのか

 

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以前書いたように、アパートのオーナーが外国人を敬遠するのは十分理解できます。

大手のデベロッパーが管理する物件であれば、マイナーな言語でも本部が通訳を雇って対応するでしょうし、家賃の滞納に対しては訴訟も辞さないでしょうが、個人経営のアパートではトラブルの対応が難しい。「燃えないゴミは金曜日ですよ」と注意しても、「日本語ワカリマセーン」で終わりそうです。

これを一律に差別だの人権侵害だと扱うべきではないでしょう。そんなもんに対応できるのは大手のデベロッパーだけになってしまいます。

住む場所については、外国人の選択肢は拡大していますから、代替を探すことは難しくない。個人経営のアパートでは、せめて「日本語ができない人はお断り」まではありにして欲しい。これを条件にしておけば、「日本語ワカリマセーン」で逃げられない。

この程度でも許せない人はNPOでも立ち上げて、外国人入居者とのトラブルがあったら、すぐに通訳を手配して現場に急行して、無償で解決に当たるので、「外国人を断らないで欲しい」と大家に頼んで歩けばいい。これだったら行政も補助金を出すんじゃないでしょうか。公金を使って、外国人の誕生日に一人8千円の食事をしてもOK。外国人、大喜び。Colaboはとんでもない悪例を作ったもんです。

アパートが外国人を断ってはならないと主張する人は、女性専用のマンションが存在していることをどう肯定されるのか説明していただきたい。男性専用のマンションも存在してますが、数が全然違いますし、それぞれ差別物件だと言えます。

異性がいない方が安心できるというのであれば、外国人がいない方が安心できる人も多いでしょう。

女性専用のマンションは存在してはいけないと私が思っているのではなく、あっちがいいなら、こっちもいいだろってことです。どっちも「容認されるべき差別」です。

 

 

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