松沢呉一のビバノン・ライフ

犬食禁止特別法に見る韓国の法律観—韓国でたびたび起きる「後進国型事故」[追記編3]-(松沢呉一)

日本で起きない事故が韓国で頻発する理由—韓国でたびたび起きる「後進国型事故」[追記編2]」の続きです。

 

 

韓国で犬食禁止特別法成立

 

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銭湯での感電死に注意—韓国でたびたび起きる「後進国型事故」[前編]」に、銭湯の感電死事故の原因もわかっていないうちから、罰則強化を主張するアナウンサーに呆れた旨を書きましたが、全然別のところで、これはアナウンサー個人の特性ではなく、韓国ではよく見られることらしきことがわかりました。

 

 

 

韓国で犬食禁止特別法が成立。これで生計を立てている業者がいっぱいいて、彼らが転業できるように、3年の猶予期間のあと、違反すると3年以下の懲役または3000万ウォン(330万円)以下の罰金。厳しい。

映像が出ているように、業者はここまで反対運動を展開、制定されたら飼育している200万頭の犬を解き放つと発言した業者もいて、今のところ解き放ったという話は出てませんが、行政が廃業、転業を支援することを約束しているため、補償金を払えという要求をしていて、その金額でまだまだ揉めそうです。決裂すると、200万匹が放たれます。

これを観ながら、「9割以上の国民は犬を食わず、食うのは年寄りたちなんだから、ほっといても衰退していく運命であり、何も税金を投下してまで業者をサポートして廃業させるまでもないべ」と思いました。「ほっといても衰退する」というのは、業者たちの主張でもあります。

ちなみに私も何度か食べてますが、筋張っていてそんなにおいしいものではありません。しかし、好きな人もいて、滋養強壮の効果が実感できると言っている人もいます。若い客が多い新大久保より、歌舞伎町や浅草の韓国料理店で食えます。肉は中国産だと言っていたような記憶があります。

 

 

マスクをめぐる日韓の違い

 

vivanon_sentence「こんな法律を作らなくても」という思いに対して、井上敦ANNソウル支局長が説明してくれています。法に対する考え方に日韓の違いが出ている可能性に言及し、「例えばコロナの時もマスクをするように韓国では法律で定めて、しないと罰金というふうになってまして、はっきりとやることを決めて、やらなかった場合には刑があるんだというのが韓国のスタイル」と言ってます。

マスクを義務化した国でも内容はいろいろで、罰則はない国、あるいは警官が強制することができ、拒否した場合に罰することができるといったように間接的罰則の国もありましたが、韓国では規定の場所でマスクをしていないと即刻罰金(10万ウォン)を課すことができる決まりです。「規定の場所」は興行、集会、祭礼などが行われる会場、公共交通機関、自宅を除く屋内です。コンサート会場や集会が行われる広場を除けば屋外ではマスクは不要。

屋外での着用も義務付けられ、逮捕されたり、晒しものにされた中国、あるいは自警団にリンチされたフィリピンよりマシですし、マスクの義務化は世界中で実施されていましたので、「とくに韓国は」ってことではなく、ここでの例としては適切ではないかもしれないですが、日本ではマスク着用が義務化されない「いい国」でしたから、日韓に限って言えば、ここに両国の大きな違いを見出すことができるかもしれない。

✳︎2024年1月9日付「Daum」 当初は動物愛護法に食用禁止の条文を入れようとしたらしいのですが、食犬反対派は納得せず。自宅で食べるところを押さえるのは難しいですから、犬肉が売られている限り、買う人はいるでしょう。そこで、生産、流通、販売を禁止する犬食禁止特別法に。この記事によると、業者は「1頭当たり200万ウォンを補償しろ」と要求。血統書付きの価格だべ。業者は3年の間にできるだけ繁殖させて金を得ようとしてそう。写真は犬食禁止特別法の制定を求める人々。

 

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