松沢呉一のビバノン・ライフ

第二試合(裁判)を予想し、裁判をしない選択を検討する—裁判を前に松本人志終了が決定するまでを振り返る[後編]-(松沢呉一)

「週刊文春」の「セックス上納システム」路線はネタが無尽蔵—裁判を前に松本人志終了が決定するまでを振り返る[中編]」の続きです。

 

 

トドメを刺したたむらけんじ

 

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週刊文春」の第二弾でアテンダーとして取り上げられたたむらけんじが語った内容が松本人志の終了を言い渡した形になりました。飲み会があったこと、自分がアテンダーだったこと、誰が好みかを聞いたことまでを認めた上で、セックス前提の会であったことや自分がしたとされる発言は否定し、渡した3千円は口止め料ではなく、タクシー代だったと弁明し、参加した女性らに謝罪し、反省の弁も口にしました。

この言葉は、肯定的に受け取られました。最初から、松本人志もこういう言葉を出すべきだったと。なのに、「事実無根」としてしまい、たむらけんじの発言によって、「ダサい」「セコい」「しょぼい」「ゲスい」という評価に「潔くない」「嘘つき」という評価が加わりました。

たむらけんじはおちゃらけることがなかったので、Xで「闘いまーす」とやった松本人志の薄っぺらさ、マヌケさが際立つ結果にもなりました。

先に言われてしまって、今から同じようなこともできず、松本人志を一層追い込みました。たむらけんじの後追いすることは、松本人志のプライドが許さないでしょう。

しかも、この発言では、「性的行為はあったが、事前に確認はなかった」と言っているに等しく、同意があったかどうかについては、松本人志に丸投げした形です。「オレは確信してないが、個室内で松本さんが確認したんじゃないか」と。そうなると、あの謝罪は「オレには責任はないが、個室内で松本人志が失礼なことをやらかしたようなので、代わりに謝っておく」という意味になり、素直な謝罪というより、相当にしたたかな謝罪です。

松本人志としては、「小沢やたむらが女性らに声をかける際に、セックスまで至るかもしれないことを説明していたと思っていた」と主張する手もあったでしょうが、それを先に否定した形です。

たむらけんじは今も吉本興業とエージェント契約を結んでいるようですから、この内容を事前に吉本興業に伝えているでしょう。それどころか、吉本興業から、内容を指定した可能性もあります。吉本興業の法務担当や弁護士の意見も反映されていそうです。

こうしておけば、たむらけんじだけでなく、これから名前が出てくるであろう吉本所属のタレントたちの傷が少なくて済みます。松本人志だけが深く深く傷を負う仕組みの完成です。

たむらけんじの発言は、自分と後輩芸人たち、そして吉本興業が生き延びるための最善の選択をしたという意味で感心はするのだけれど、なんと残酷な発言なのだろうと寒々とした気持ちにもなります。

自分自身の体験から、また、仲間内の噂から、松本人志が何を求めているかくらいわかってないはずがないじゃないですか。子どもじゃあるまいし。今回、松本人志が書かなくていいのにXに書き込んだように、松本人志は事が終わった後で「あの女は〜」といらん感想を述べ、「次はこういうのを頼むよ」なんて語っているでしょう。

たむらけんじはそれをすっとぼけた上で、すべて松本人志に押し付けたのですから、私は褒め称える気はしない。彼も自分を守らなければならないので、責める気もないですが。

✳︎「松本人志の今後の活動に関するお知らせ」は、英語中国語(簡体字)でも公開されていて、万博アンバサダーとして国外にも説明が必要とされた、あるいは国外でも報道されていることを受けたものとも言われていますが、真意は不明。

 

 

第二試合も相当に難しい

 

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裁判さえも、吉本興業は松本人志に押しつけることにしたようで、これからの裁判で、松本人志(+小沢一敬)は「嘘つき」の烙印を負っていくことになります。

しかし、小沢一敬は、「何ら恥じる点がない」にもかかわらず、活動自粛を公表

 

 

 

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