松沢呉一のビバノン・ライフ

ホロライブ一期生・夜空メルの契約解除—VTuberの言葉遣い-(松沢呉一)

 

機密情報漏洩で夜空メル契約解除

 

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昨日、ホロライブから夜空メルの契約解除が発表されて、世界に衝撃が走りました。

 

 

リアルタイムに契約解除や卒業の瞬間を目撃するのは初めてです。

今に至るまで、私にとっての夜空メルは、顔と声とキャラが一致しない存在の一人ですが、さぞかしファンはショックであろうと察します。

昨日を最後にこの世界に存在しなくなるのですから、死んだも同然。卒業の場合は、これからしばらく名残を惜しむ期間があって、それはそれで別れが辛くもなりましょうが、準備がなくいきなりポカッと存在の穴が開くと、受け手の中にも空白を生みそうで、どうにも埋められなくなりそうです。

中の人はこれからもどっかにはいるわけですが、VTuberは虚構性が強いため、それっきりになる感触があります。松本人志がテレビから消えても、家にいて、電話やメールで吉本興業関係者や弁護士と対応を協議しているのだろうと想像でき、YouTubeでチャンネルを開設するのか、ロフトプラスワンに出るのかはわからないですが、いずれまたお目にかかれるとの期待もできるのに対して、VTuberが消えると、その想像が希薄で、喪失感がより強いのではなかろうか。

 

 

VTuber契約解除の特性

 

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弊社から取得した機密情報や、やり取りを許可なく第三者に漏洩する」というのが具体的に何を指すのかは不明ですが、「機密情報」という言葉から一般に連想されるような重みのある情報ではおそらくないでしょう。カバー株式会社には谷郷社長に対する「セックス上納システムがある」なんて面白い話でもなさそう。

会社員が飲み屋でよくやる「うちの同僚は、新入社員に手を出してさ」みたいなレベルの雑談でも、VTuberの虚構性を破壊しかねないので、VTuberが守らなければならない秘密の範囲は広い。

しかし、家族や友人、知人に、自分がVTuberだと明かして以降、部外者はVTuberの実像を知りたがるため、そこを警戒して部外者と距離を置き、VTuber同士の交流が強まるのが必然。プライベートでも、一緒に住んでいたり、旅行したり、焼肉を食べに出掛けていたりするのは納得しやすい。漫才コンビでも、バンドでも、人気が出るとプライベートでは会わなくなるのが通例ですが、VTuberたちはしばしば逆走します。

それだけに、今回の夜空メルの契約解除はホロメンたちにとってもショックだったようです。

 

 

一期生は5年以上のつき合いですからね。たった6年足らずでこれだけ巨大になったのは驚異的です。

 

 

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