有権者ID法は人種的マイノリティに不利か?—米国の有権者ID法に対する賛成派と反対派の意見[前編]-(松沢呉一)
The Daily Wireの動画
「鳥山明がいなくなった世界で鳥山明について語り続ける人々—ステロタイプとデフォルメで成立する漫画やアニメ」で取り上げたチャンネル「頼むぜエディタ」で、ちょっと前に、こんな動画を出してました。
これを観る前に、元動画は観ていました。
こちらです。
この動画をきっかけに選挙制度をめぐる民主党と共和党の対立をまとめようとしたのですが、調べるのにえれえ時間がかかった上に、細かくなりすぎてまとめきらず、放置してました。
実際、この対立を生じさせている背景は相当に面倒です。その複雑さもあって、両者ともに問題を簡略して語る傾向が強く、この動画にあるように、民主党支持者の中には、「黒人は劣っているから、ケアしてやらなければならない」という発想になっているケースが見られるのは事実。
ただ、一方でThe Daily Wireの報じる内容は信憑性が薄いとの批判があって、この動画でも、民主党支持者のバカっぷりを強調するために、そういう方向で対象を選び、編集もしているでしょう。インタビューが細切れであることがそれを示唆していて、おそらく誘導もしています。そのことを意識して観ることをお勧めします。
また、この動画では、説明すべきデータを添えていないため、とくに日本人にとっては、正確に理解することが難しい。
「頼むぜエディタ」が取り上げているのを観て、放置した文章を無理やりまとめて出しておくことにしました。
米国における有権者ID法
大統領選では、事前に登録して、送られてきた投票用紙を待って投票所に行きますが、他者になりすますなどの不正投票が行われているとの批判があります。そこで、不正を封じることを目的として、投票時に身分証の提示を求める有権者ID法はすでに50州のうち35州で施行されています。写真付きの身分証を必要とする州が19、写真なしの身分証でもいい州が16です。
これらは、投票時につねに提示を求められる州と、係員が求めたら提示しなければならない州とに分けられます。どちらにせよ、投票所に身分証を所持する必要がありますが、当日忘れる人もいますから、その場合は、記載済みの投票用紙を預かり、規定の日までに身分証を提示することで有効票になります。
また、厳格に身分証のみを証明の方法とする州と、身分証を所有していない投票者のために供述書に署名するなどの代替法が用意されている州とがあります。
2023年11月9日時点のマップ(National Conference of State Legislaturesより)
上から、「写真付き身分証が必須」「写真なしを含めて身分証が必須」「求められたら写真付き身分証を提示をしなければならない」「求められたら写真なしを含めた身分証を提示をしなければならない」「身分証の必要なし」です。
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