松沢呉一のビバノン・ライフ

NY州の検事も交通違反で顔を公開された—警察のボディカメラと肖像権[続編]-(松沢呉一)

日本人観光客も他国で迷惑行為—警察のボディカメラと肖像権」の続きです。

 

 

サンドラ・ドーリー検事の場合

 

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肖像権は米国が先進国で、日本ではそれらを明文化した法令は存在せず、プライバシー権として、民事の判例で判断するしかありません。

そのため、米国の方が肖像権に厳しいという思い込みが私の中にはあるのですが、「日本人観光客も他国で迷惑行為—警察のボディカメラと肖像権」でまとめたように、米国はやってはいけないことが明白である分、やっていいことも明白で、犯罪や事故の現場では表現の自由が優先されて肖像権の主張ができない、つまり個人の顔を撮影し、公開してもいい。

そのような考え方に基づいて、州や市によっても違いながら、警官が装着しているボディカメラの映像は、モザイクなしで公開されています。

さっき、同じチャンネルで公開されていたボディカメラの動画。

 

 

ひでえ。絵に描いたような「交通違反をもみ消そうとする権力者」がここに爆誕。

この動画がYouTubeで公開されたことで多くの人々の怒りを喚起し、メディアも軒並み取り上げ、サンドラ・ドーリー検事は地元のテレビに出演して謝罪しますが、辞任しないと宣言して、今なお騒動は収まっていません。

ボディカメラの映像があってよかったですよ。かつ第三者が公開できる制度になっていてよかったですよ。

 

 

他国に行く際の心得

 

vivanon_sentence似たようなことをやりながら、この検事に比べれば、日本人観光客は、自分のやったことを素直に認めて潔い。

ここから得られる教訓は、よその国に行く際はその国のルールを予習しておくこと、そのルールに従うこと、予習できていない行為はしないこと、米国やそれに類するルールになっている国で犯罪をやってしまったら現場の映像をモザイクなしで公開されると覚悟することです。

あの日本人たちは、それらのすべてを理解してなかったわけで、同情の余地はないのですが、法の論理としては理解できるものの、日本でも彼女らの顔が確認できてしまうのは酷だと思いました。

推測でしかないですが、おそらく米国では、公人ではない一般市民の顔をアップにして晒したり、個人を特定すると、プライバシー侵害で訴えられ、多額の賠償金を支払うことになるリスクがあるので抑制が働くのではなかろうか。

しかし、日本の特定班は遠慮なく特定し、公開していきます。

✳︎2024年5月2日付「NEW YORK POST」 地元放送局「NBC 10」に出演して、謝罪しながらも「辞任しない」と宣言したことを取り上げた記事

 

 

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