『orange オレンジ』 青春映画とタイムトラベルは相性がいい・・・はずなのにたどりついてしまった恐ろしい結論 とは?(柳下毅一郎)
監督 橋本光二郎
脚本 金子ありさ
原作 高野苺
撮影 鍋島淳裕
音楽 大友良英
出演 土屋太鳳、山崎賢人、竜星涼、山崎紘菜、鶴見辰吾、真野恵里菜、森口瑤子
「高校二年生の私、元気ですか。私は10年後の未来から手紙を書いています。私にはたくさんの後悔があります。あなたには私と同じ後悔はしてほしくありません……」
……という手紙が十六歳高校二年生の菜穂(土屋太鳳)の元に届く(手紙にはちゃんと切手が貼られ消印が押してある)。「4月6日、転校生がやってくる。席は私の隣になる」手紙のとおり、東京からの転校生、成瀬翔(山崎賢人)がやってくる。手紙は本当だったんだ! そして続きには「放課後、翔をさそうと最初は断られる。絶対に無理に誘わないでください」無理矢理誘うとのちのち後悔することになるから誘ってはいけないのだという。だが何も知らない友人須和(竜星涼)が誘ったので、仲良しグループ五人と一緒に翔は放課後楽しく遊ぶ。じゃあ、よかったんじゃない……だけどそれから二週間、翔は学校を休んでしまう。ひさしぶりに登校してきたのは球技大会の日。
「4月20日、ソフトボールで代打を頼まれるけど断ってしまう。かわりにアズが代打で出て三振する。後悔しないように、是非代打で出てください。この日、私は翔を好きになる」
そういうわけで、タイムトラベルものである。青春映画とタイムトラベルは相性がいい、と昔書いたような気がするが、二度と取り返せない青春を取り戻せるのがタイムトラベルである。後悔だらけの人生をなんとかしたかったので、過去の自分に手紙を送って後悔の種を消してみました! まあそう考えるのは自由なのだが、この場合 1)どうやって手紙を送ったのか? 2)タイムパラドックスは起きないのか? とふたつ大きな問題が発生する。
まずタイムパラドックス。これはかなり早いうちに多世界解釈が採用される。つまり、タイムトラベルによって過去に戻った場合、その時点で世界の分岐が起こって新しい世界線が生まれるので、本来の世界とのあいだで矛盾は発生しないという考え方。これはタイムパラドックスを回避するという意味では満点なのだが、問題は、それだと過去をいくら改変しても現在には波及しない(改変されたかどうかすらわからない)わけで、現在(=タイムトラベルで過去を改変しようとたくらんだ自分)にとって、その改変はなんの意味があるの?という疑問がわいてきてしまうわけである。これと1)の回答を組み合わせると、実はこの映画の恐るべき真相があかるみに出るわけだが……
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