『Please Please Please』 「さあ、ゲームをしよう」 のセリフで映画がはじまった瞬間に頭を抱えたわけである (柳下毅一郎)
→公式サイトより
製作・監督・脚本・撮影・編集 堀内博志
音楽 秋田茉梨絵
出演 佐藤流司、佐藤永典、赤澤燈、紗々、大熊杏実、マンボウやしろ、真田登久子
「さあ、ゲームをしよう」
のセリフで映画がはじまった瞬間に頭を抱えたわけである。本作、「孤独を抱える若者たちーー彼らの焦燥と渇望は新たなる閃光を放つーーリアルとファンタジーが融合する青春映画の傑作が誕生!!」というコピーがついて、それにしても「リアルとファンタジーの融合」ってなに? ある地方都市に生きる若者たちをリアルに描いたという触れ込みなんだが地方都市ってどこ? 「数々の舞台やミュージカルで活躍している」俳優たちって誰? と何もわからないままに見に行った映画がこれである。ちなみに監督だけは誰だか知っていて、製作・監督・脚本・撮影・編集は『縁 The Bride of Izumo』の堀内博志。そうあの手品師がシルクハットから佐々木希とクリストファー・ドイルを出して作ってしまった映画の監督である。トリックスター・リオ抜きだとやはりこうなるのか~というわけで、この破壊的なセリフを吐いたのはシンジ(佐藤流司)である。ノゾミ(紗々)というリスカ少女をつかまえて目を閉じて額をくっつけあい、そこで言うのがこのセリフ。「何が見える?」と問いかける。「ぼくはゆれるカーテンの色。子供たちの声。コーヒーとトーストの混じり合った臭い」孤児として育った自分が得られなかった幸せを求めてるんだ、と言われて舞い上がってしまうノゾミ、「会わせたい友達がいるんだ」と言われるとほいほい廃墟までついてゆく。するとそこに待っているのはアオイ(赤澤橙)。「シンジはオレたちから金を借りてるんだよ。きみが返してくれるって言われたんだけどね」暴力を匂わすアオイにすぐ屈服して「女ならいろいろ返す手段あるじゃない」と露骨に匂わす。要するにメンヘラ女を専門に狙うスケコマシを稼業にしているわけですね。しかしトンネル抜けて廃墟に連れて行く時点で、いろいろ撮影上の苦労が感じられるとはいえ、どうなんだろうって感じですな。
「わたしたちは、彼に許されることを望んでいた……」
そこでこのチープな犯罪をなぜか詩的につむぐ女性ナレーションが物語を語っていく。どうやらこの語り手の女性もかつてシンジに騙された被害者の一人であるらしいのだが、実はシンジの弟はナオ(佐藤永典)といって廃業した映画館を根城にオレオレ詐欺をやっている。孤独に育った兄弟が「焦燥と渇望」を抱えてるというんだけど、こいつらただの不良だろう! どんなに詩的なナレーションで「彼らはゲームをやっているつもりだった……」とか言ったって、ただの激安犯罪者でしかないわけで。ちなみにほどなく判明するのだが「ある地方都市」とは熱海のことである。寛一お宮の像の前でオレオレ詐欺。それで何が「Please Please Please」やねん! JBに謝れや!
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