鵤誠司「いかにチームの歯車を円滑に動かせるか―。チームのために “つなぎ役” に徹するプライド」インタビュー・コラム【無料記事】
「誠司のプレースタイルは基本、個人プレーではないんですよね。個人で打開しようとするのではなくて、やらなければいけないことをチームのためにやるというスタイルです。それも性格なんだと思うのですが、(…中略…)要領がいいというか、必要最低限のことをやっていればいいという性格が、このチームにものすごくハマっている。だから、コンディショニングのところを除けば非常に安定しているしバランスが取れている選手で、それがチーム好調の要因なのは間違いないです」
佐々宜央AC(アシスタントコーチ)は、今シーズン、ブレックスが首位をキープする理由をこう説明した。
さらに、「今シーズンこれだけ勝てているのは、誠司があそこまでやれているというのが大きいです。誠司が安定していればブレックスは安定する。そこが勝ちにつながっていて、誠司が安定していると最終的にはどうにか勝利に持っていける」と高く評価した。
ACからこれ程までの評価を受けた鵤は、この言葉をどのように受け止めたのだろうか。率直な感想が聞きたいと思ったのが、今回の取材のきっかけだった。(文・写真/藤井洋子、取材日:3月18日)
―――【インタビュー】―――
リーグ戦でやり返す
―天皇杯は、決勝で川崎ブレイブサンダースに敗戦し、準優勝という結果になりました。まずは天皇杯の感想を聞かせてください。
悔しい結果にはなりましたがリーグ戦でやり返すチャンスはありますし、勝てなかったことで、より一層勝ちたい、やり返したいという気持ちが強くなりました。これから勝っていくためには、まだまだステップアップしなきゃいけないし、まだできることもあるので、この負けをポジティブに捉えてリーグ戦を戦っていけたらと思います。
―川崎のビッグラインナップなど、実際に対戦してみてどんな印象を持ちましたか。
ビッグラインナップは川崎の強みだと思うのですが、そこにはリバウンドで苦戦しました。オフェンスリバウンドを取られてしまうこともありましたし、あの試合に関しては、ちょっと嫌でしたね。でも、自分たちのやりたいことをブレずにやり続けることができれば、勝てるチャンスはあると思っています。
―リーグ戦ではブレックスが首位をキープしています。チーム好調の要因を、鵤選手はどのように捉えていますか。
観ている人からしたら「1位ですごいね」って思うのかもしれないですけど、僕らは、誰も好調とは思っていないです。東地区で優勝したいという思いはあるので、当然、順位については意識していますが、不思議と自分たちの中では、好調とは感じていないですね。
―ご自身のプレーについてはどうですか。
個人的なことには全くこだわりがなくて。チームが1位になれているのであれば、自分としてはそれが一番です。
チームの中の “つなぎ役”
―佐々ACは、チーム好調の要因は「鵤選手が安定していること」だとおっしゃっていました。
僕はものすごく点数を取りにいくとか、そういうことをするタイプじゃないので、そもそも焦ることがないんです。得点をたくさん取る選手だったら「俺が得点を取らなきゃ」とか、シューターなら「ちゃんとシュートを決めなきゃ」という気持ちがあると思うのですが、僕の場合、つないでパスを出すとか、ディフェンスでもつなぎというように、チームの中の “つなぎ役” なので、焦る要素が何もないんです。だから落ち着いてプレーができているのだと思います。もちろん、それも大事なことなんですけど。
―つなぎ役、焦りがない落ち着いたプレー。確かに、鵤選手のプレーはこの言葉がキーワードになりますね。ご自身でも自覚されているそうした特性は、劣勢な試合や大きな舞台にこそ威力を発揮しそうですが、それはスタートで出ていることやガードであることに関係はありますか。
点差を離されている時に慌てても、良いことって何もないですよね。やるべきことを一つ一つやるだけなので、焦ると逆にマイナスになってしまう。
僕はガードだからとか、スタートで出ているからというのは一切関係なくて、そもそもバスケットボールに焦りは必要ないと思っているので、どんな時も、たとえ点差が付いていたとしても、普通に自然にやっているつもりです。CS(チャンピオンシップ)になったら、もしかしたら緊張するかもしれないですけど、普段はほとんど緊張もしないです。
出だしから勢いを出したい
―タレント揃いのブレックスの中で、自分がスタートで出る意味や役割についてはどのように考えていますか。
難しい質問ですね。ゲームの出だしって大事な時間なので、そういう時にしっかり仕事ができているかというと、正直、自分ではよく分からないです。でも、しっかりやれるように準備していきたいし、僕はつなぎ役だと思っているので、いかにチームの歯車を動かせるかというところを、今シーズンは意識してやっているつもりです。
あとは、出だしから勢いを出したいですね。特にディフェンスは最初から激しさを出さなきゃいけないと思っていて、自分はそれができる選手だと思うので。毎試合それができているかというと分からないですけど、それができる選手ではあるので…。というか、そこを期待されていると思っているので、そうした期待にしっかり応えられるようにやっていきたいです。