バスケットボール・クラッチ

ブレックス藤本光正社長「Bプレミア参入を至上命題としていく覚悟です」(インタビュー)

W杯の盛り上がりを維持したまま開幕を迎えた2023-24シーズンも、早いもので折り返し地点を迎えた。このバスケット人気を定着させるために、今シーズン取り組んできたこと。また、気になる新アリーナについての情報を、ブレックスの藤本光正社長に聞いた。(文・写真/藤井洋子)

慢心せず、地道に

 ―長く続いたコロナ禍を経て、2023-24シーズンは開幕前からW杯でバスケット界が盛り上がりました。最高の状態で迎えたシーズンになりましたね。

コロナ前に「戻った」以上に、コロナ前を「超えている」印象があります。新規ファンの拡大という観点では、ブレックスでいえば、W杯の大活躍により注目度も一気に高まり、メディア出演なども増えた比江島慎選手が在籍していることが、とても大きいと感じています。コロナの影響が緩和されたことも相まって、いまのところホームゲームは平日のナイトゲームを含めて立ち見が出ている状況です。いろんな要素が重なってこのような状況になっていると感じています。

ただ、ここであぐらをかかず、泥臭く、地道にやるべきことをやっていこう、日々の努力にフォーカスしていこうという意味を込めて、今シーズンは「STRIVE(ストライブ)」というスローガンを掲げました。集客面においても、これまでのブレックスらしくしっかりと地に足をつけたプロモーション活動や地域貢献活動を継続していきたいと思っています。

スローガン決定のもう一つの背景としては、2022-23シーズンはチーム成績が目標未達となり、CS(チャンピオンシップ)に出られませんでしたが、やはり、それではいけないということで、かなり早い段階から準備し、編成に力を入れて強化、補強をしました。とはいえ選手がそろったから「勝てるだろう」というスタンスではなく、慢心せず、地道にやっていくこと。まずは1試合1試合、11回の練習を大事にし、目の前のことに愚直に、泥臭く取り組み、一歩一歩コツコツとやっていくという意味を込めて、STRIVEというスローガンに決めました。意識的な部分を含めて、いまのところできているのかなと思っています。

 

―開幕前には、ギャビン・エドワーズ選手とDJ・ニュービル選手の加入が大きなニュースとなりました。

2人とも本当に良い選手です。他のチームで中心選手だった場合、移籍してすぐにそのチームにフィットするのは難しいこともありますが、彼らはそんなことは全くありませんでした。人格的にも非常に素晴らしくて、チームファーストの精神を持っています。BREX MENTALITYの考え方に、すごく合う選手だと思います。

エドワーズ選手は、「ファンが受け入れてくれるかどうかが不安だった」とインタビューで語っていましたが、「素晴らしい人間性を持った選手だ」ということはずっと聞いていたので心配はしていませんでした。エドワーズ選手、ニュービル選手ともに、練習からハードワークするので、チームに良い影響しかもたらしてないという認識です。

 

まずはCS進出は必達

―「補強の部分で力を入れた」ということですが、かなり早い段階から動かれていたのですか。
はい、いつもより早い段階から鎌田GM(ゼネラルマネージャー)が動き、日本人選手も含め、良い形で補強が進んだと思っています。10年間ずっとCSに出ていながら、昨シーズンは出られなかったというのはチームにとってはものすごく大きなことだったので、「まずはCS進出は必達」と、いつも以上にアクセルを踏んだ編成を行ったという感じです。

昨シーズン感じた悔しさが、このシーズンに懸ける思いや補強の判断に繋がっていると思います。また、現場の選手たちも、特にベテランの選手たちを中心に、オフシーズン中の体作りにいつも以上に力を入れて取り組んでいたので、そうした行動の変化にも表れています。

 

―バスケット界が注目される中で開幕を迎えたわけですが、何かこれまでと違った取り組みなどはあったのでしょうか。

開幕の段階で、ブレックスではなくリーグ全体での話として「チケットの購入者が前シーズンの2倍になっている」というデータがリーグから発表されましたが、W杯の盛り上がりを一過性で終わらせずに、いかに定着させるかが重要だと考えていました。ありがたいことに新規の方がとても増えているので、一度観に来たら次にまた来たいと思っていただけるように、試合の中での演出やホスピタリティ、飲食の部分などの充実を図ってきました。

そのほか、試合の日にブレックスアリーナ近くの公園で子どもたちのシュート体験ができたり、いろいろなスポーツ体験ができたりするようなブースを出したり、縁日のようにヨーヨーすくいをやったりして、スペースを拡張した形でイベントを開いたりもしました。これも今までとは違うターゲットにアプローチして、より多くの方を呼び込もうということで始めたことです。

また、あまり目に見えないところでは、データのマネジメントに力を入れています。LINEの友だちを増やす仕掛けをしてみたり、来場履歴に応じてメールを使い分けたりクーポンを差し上げたりと、データを見ながらさまざまな施策を行っています。そうした中でも、やはり一番大きいのは地域貢献活動です。幼稚園・保育園への訪問などは、週に1回は行っているんですよ。

 

―見えない部分でも、いろいろと取り組んでいるのですね。新規のファンもどんどん増えているようですし、Bプレミア参入条件である「入場者数4000人」「売上高12億円」については、問題ないのかなと思いますがいかがですか。

はい。売上高はコロナ前から既にクリアできていました。集客については、今シーズン、ブレックスアリーナなら最大で44004500人ぐらい、日環アリーナは5500人ぐらいのキャパシティなのですが、このままいけば、集客についても基準をクリアできると考えています。

 

水面下では非常に前向きに前進

―そうすると、残るは「新アリーナ」ということになりますが、現時点で何か出せる情報はありますか。

新アリーナ建設計画について、水面下では審査基準の到達に向けて非常に前向きに前進しています。しかし多くの関係者が絡むことから、計画公表にはまだ少し時間がかかりそうで、ファンの皆様にはご心配をおかけしていると感じています。

以前、記者の方に「2023年の年末までにはお話しできるかと思います」と話したのですが、その後予定が少しずれてしまい、結局年末までには公表できませんでした。決して、なにか進捗が危ぶまれているとか、そういうわけではないのですが、公表するには各関係者の調整が必要なことから、申し訳ありません。

 

―そこを何とか(笑)。

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