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CS初出場→準決勝の横浜ビーコルの合言葉は『Help each other!』  なぜ最高の助っ人は6つの質問に7回『チームとして』と繰り返したのか

 

 

『チームとして……』

 

デビン・オリバーは何度も繰り返した。魔法の言葉を唱えるように。自分自身に言い聞かせるかのように。

 

513日、BリーグCS準々決勝のGAME1で宿敵川崎ブレイブサンダースとのアウェーゲームを接戦の末にものにしたあとのことだ。記者の質問を受けていたオリバーの口から何度も語られた言葉があった。

 

以下に彼の言葉から3箇所抜粋しよう。

 

「前半に『チームとして』良くできていなかった部分は、オフェンスリバウンドを簡単に相手に与えてしまい、そこからのセカンドチャンスポイントを結構とられてしまっていたところ。そこは『チームとして』修正しよう、という話をハーフタイムにしたんです」

 

「(相手のエースの)ファジーカス選手に対して、須藤選手がスイッチしても、本当に体をよく張って(ディフェンスをして)くれました。その踏ん張りや協力があったおかげで、結果として自分のところにボールが転がってきたと言うイメージで。『チームとして』のディフェンスで協力しあえていたことが、自分のダンクにつながったのだと思います」

 

「今日の勝利は、クラブとしても本当に歴史的な1勝だったので、『チームとして』みんなで分かち合いたいと思います」

ここまで繰り返していたのだから、彼にはこう聞かずにはいられなかった。

 

「『チームとして』という言葉を繰り返し使う理由は何故なのですか?」と。

『チームとして』を繰り返したオリバー

 

「質問の答えと少し外れてしまうかもしれないですが、僕の考えを話していいですか?」

 

そんな前置きとともに、神妙な面持ちになったオリバーは続けた。

 

「実は、シーズンを通して自分にはやってきたことがあります。それはバスケットボールと直接なかかわりがあるかどうかはさておき、本当に大事にしていることで。

 

毎日、顔を合わせる仲間には何度も握手をしたり、スキンシップやコミュニケーションをとるようにしてきたんです。

 

そういうことの積み重ねで、コート外にもつながるような『チームとして』のまとまりだったり、仲の良さが生まれる。そして、それが試合中の良いプレーにつながると信じているんです!

 

今のチームの勢いや団結は、そうやってシーズンを通して積み上げてきたもから生まれているのだと思います」

 

気がつけばオリバーは、記者からの6つの質問への回答のなかで7回も『チームとして』という言葉を発していた

 

あれから5日後――。

 

チームの合言葉について説明する須藤

 

CS準決勝の琉球ゴールデンキングスとの試合を前に取材に応じた須藤昂矢に、オリバーの想いについてたずねると、こんな答えが返ってきた。

 

「お互いに助けようという意識があるというのは、本当に強いチームだと思っているので。それがあるので、CS(準々決勝)でも助け合いながらプレーできました。

 

チャール・ジャクソン選手だったり、オリバー選手が、練習中にも試合中にも『助け合おうぜ!』と 何回も声をかけてくれるので。それはすごく大きいと思います」

 

助け合おう』という言葉が彼らの口からよく聞かれるものであるならば、英語でどういう表現をするかも知っているのではないか。そんな質問に須藤は即答した。

 

「チームのなかでよく聞こえてきますね。『Help each other!』という言葉です」

 

 

そんな須藤の話に同意しながら、オリバーやジャクソンなどの声が団結を生んでいると証言する選手がいる。

 

英語も日本語も堪能に使いこなすキング開は、先輩の意見に補足するように語り始めた。

 

「やはり、デビン(オリバー)やCJ(*チャールズ・ジャクソン)の人間性ですよね。大きいのは、彼らがすごく声を出してくれる選手だということです。もちろん、自分たちも、声は出しているんですけど……」

 

キングはそういって考え込み、やがて、答えに到達した。

 

「デビンもCJも、すごく熱い人たちなんです!

 

どんなにミスしても『大丈夫、次は行けるから』みたいな、前向きな声を練習中からずっと出してくれて。それも今シーズンのはじめからです。もちろん、試合中にもです。試合中の流れがあまり良くない時でも、あの2人が率先して声を出して、それをみんなでしっかりついていく。

 

だからこそ、今シーズンは悪い流れになっても、すぐにそういう流れを断ち切れて、また自分たちのペースに持っていけているのではないかなと思いますね」

 

このチームのエースは河村勇輝で、キャプテンは森井健太だ。

 

彼らがフィーチャーされることは多い。ただ、その傍らでは、須藤やキングの言うように、助っ人の外国籍選手たちが声を出している。

 

しかも、彼らの存在感の大きさはその人間性だけにとどまらない。ビーコルはBリーグのなかで唯一、アシストランキングのトップ102人(河村と森井)を送り込んでいるチームなのだが、彼らのパスが生きるのも、そのパスを受けてゴールを決めるジャクソンやオリバーがいるからに他ならない。

 

思えば、レギュラーシーズンの最後に青木勇人HCは、CSで勝つためのキーポイントについてこう語っていた。

 

「うちは個人だけの力ではどうしても(他のチームに)ねじ伏せられるところはあると思います。誰か1人が欠けてもダメで、うちはチームとして戦わないといけないんです」

 

HCの言葉や、すぐれたパスを出せる選手が2人もいるという事実が物語るのは、ビーコルは全員バスケでここまで来たということだ。

 

そして、それがコートの上で表現できたからこそ、CS準々決勝でも川崎の本拠地とどろきアリーナで勝利をつかむことができた。

 

ただ、これから戦うCS準決勝のキングスの本拠地・沖縄アリーナは現在のBリーグで最高のアリーナであることを忘れてはならない。1年の総決算となるCSであることを踏まえれば、これまでにビーコルが経験したことのないレベルのホームチームへの応援がこだまするのは間違いない。これまでと同じようなメンタルでプレーするのは簡単ではないだろう。

 

ただ、そんなときにジャクソンやオリバーがかける『大丈夫、次は行けるから』という声や、今ではみんなが英語で掛け合っている『Help each other!』という合言葉が選手たちの背中を押すことになるはずだ。

 

思うようにいかない時間帯や、沖縄アリーナの熱狂的な雰囲気に飲まれそうな時間帯。そんなときにジャクソンやオリバーがどんな表情で、チームメイトに声をかけているのか。そこで試合の行方は判断できるはずだ。

 

 

最後に、キングが語っていた試合のメンバー入りできる選手以外の13人目の仲間の存在についての言葉を紹介しよう。ビーコルのユース出身らしい選手の観点から、彼は力を込めて語っていた。

 

「自分はずっとビーコルを見ているのでわかるのですが、ビーコルのファンやブースタって、バスケに対して熱い気持ちの人が多いんです!

 

試合にものめり込んでいる人たちが多いので、その分、応援も大きくなっててきます。自分が試合に出ている時も出ない時も、その応援は耳に入っていますから。本当に頼もしい存在ですよ」

 

ビーコルブースターについて熱弁をふるうキング

 

 

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