ジミ・ヘンドリックス『アー・ユー・エクスペリエンスト?』 アメリカでもイギリスでもないギター・サウンド、これでジミ・ヘンは世界を制覇したのです (久保憲司)
エリック・クラプトン、ジェフ・ベック、エドワード・ヴァン・ヘイレン、そしてブライアン・メイまで紹介したのですから、ジミ・ヘンドリックスのことを書かないわけにはいかないです。どれくらいの人がジミ・ヘンドリックスの本当のすごさを分かっているのでしょう。ボブ・ディランと同じくらいなぜいいのかよくわからないんじゃないでしょうか?
ジミ・ヘンドリックスは何を変えたのか。
ピート・タウンゼントはジミ・ヘンドリックスを初めて観た時、それまであまり喋ったことがなかったエリック・クラプトンを映画に誘い、二人は黙って映画を観て、映画も終わり、誰もいなくなった映画館でピートは「ジミ・ヘンドリックス観たか?」と訊ねた。「ああっ」と返答したエリックに「俺たち仕事なくなるな」と答え、エリックも「そうだな」とボソッと呟いたエピソードが僕は大好きです。
正確に書くと、エリック・クラプトンはジミ・ヘンドリックスと同じステージに立っていました。クリームのコンサートに、ジミ・ヘンドリックスのマネジャーで元アニマルズのチャス・チャンドラーに連れて来てもらったジミは、「エリック・クラプトンと演奏したい」と無茶ぶりをします。
元バンドマン仲間のチャス・チャンドラーに頼まれたらギターの神様エリックも断れず、どうせ大したことない奴だろうと思って、アンコールで一曲ジャムることにしたら、この失礼な若い黒人ギターリストは先にギターを弾きだしたのです。普通ゲストは出演者たちの演奏を待って、もしくは「何々って曲をやるけど、お前コード進行分かるか」などと訊かれてからやるものですが、ジミはオーティシュ・ラッシュかなんかの曲のイントロを弾きだします。バンド・メンバーは仕方なく、ジミのギターに合わせて演奏を始めます。ジミのプレイを観ていたエリックはそのままギターを弾かずにステージを降りてしまいました。
この時のエリックの気持ちはどう言うものだったのでしょう。「彼がブルースをなんたるか分かっていたから、僕はもう彼に任せたらいいかなと思ってステージを降りたんだ」みたいなことを言っていたような気がしますが、本当の気持ちは語っていないのです。アメリカから来て、イギリスで一旗当てようとしている青年なんかとひと勝負したらとんでもないことになると思ったのでしょう。しかもその時、ジミが手にしていたギターはジミの恋人で、リチャーズ夫人とあだ名されるリンダ・キースから借りたキース・リチャーズの白いストラトキャスターが握られていたのです。
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