久保憲司のロック・エンサイクロペディア

『スモール・フェイセス』 スティーヴ・マリオットがどれだけかっこよかったか。小さな体からほとばしるエネルギーはいつみても気持ちがいいです [ロック世界記憶遺産100]

 

 

 

毎日レッド・ツェッペリンのギターを練習してるんですが、一体何のために僕はやっているんだろうと思います。

ボケ対策にはいいのですが。僕が目指しているのはパンクなのに。

3コード、いや2コードとかワン・コードで、いいメロディとか歌詞が浮かんで来たらいいだけなんですけど。浮かんでこないんですよね。

まっ趣味としては、ジョニー・サンダースのようなギターが弾ければいいだけなんですが。

ジョニー・サンダースにもジミー・ペイジにも影響を与えたギターリストというかシンガーと言えばスモール・フェイセスのスティーヴ・マリオットです。

ジョニー・サンダースはNYドールズ時代、なぜ高級なレスポールじゃなく、チープなTVジュニアを弾いているかというと「安かったから」と言ってますが、本当はスモール・フェイセズ時代のスティーヴ・マリオットがTVジュニアをかっこよく弾いていたからです。

 

 

スティーヴ・マリオットがどれだけかっこよかったか、YouTubeで見れるんで、確認してみてください。レスポールより軽いTVジュニアを低く構えて、ブンブン振り回しながら弾いてます。ギター・アクションの原型があります。

ジミー・ペイジが異様に低い位置でギターを弾くのは、スティーヴ・マリオットの影響なのです。スティーヴ・マリオットは背が低かったから、ギターが低い位置にあっただけだと思うのですが、スティーヴ・マリオットから楽器を低い位置で構えるとかっこいいというスタイルが始まったのです。

 

 

スティーヴ・マリオットは超高級なグレッチのホワイト・ファルコンもすごい下の位置で弾いていて、これまたかっこいいです。高級なギターは買えないと言っていたNYドールズが白いグレッチを弾いているのもスティーヴ・マリオットの影響なのです。ニール・ヤングとは違ったグレッチのかっこいい弾き方、もちろんブライアン・セッツァーとも違ったバウ・ワウ・ワウのマシュー・アッシュマンやシアター・オブ・ヘイト、ザ・カルトのビリー・ダフィーなどに引き継がれたイギリスならではのグレッチを弾く姿があるのです。

 

 

クラッシュのポール・シムノンが低い位置でベースを構えるのもそういうことです。リズムをキープする大事な楽器を低い位置で構えて演奏するなんてと当時はみんな思ったんですけど、今は当たり前になって誰もなんとも思わないです。

 

 

スティーヴ・マリオットの小さな体からほとばしるエネルギーはいつみても気持ちがいいです。

ヤードバーズを辞めて、新しいバンドを始める時、ジミー・ペイジが雛形としたバンドがスモール・フェイセスです。日本だとザ・フーの弟バンドみたいに思われていますが、後に世界を制するバンドの雛形となったバンドなのです。

彼らのデビュー・アルバムに入っている「E too D」という曲を聴いてみてください、曲名の通り、EからDを演奏しているだけなんでしょうが、ロックの歴史を変えたと言われるレッド・ツェッペリンのデビュー・アルバムの一曲目「コミュニケーション・ブレイクダウン」のこれパンクの原型なんじゃないのと思わせる破壊力抜群のサウンドは一緒だと分かるでしょう。スティーヴ・マリオットのソウルフルなヴァーカルはまるでロバート・プラントンのようです。そうジミー・ペイジがレッド・ツェッペリンを作る時に思い描いていたのは、ヤードバーズの音楽をもっとスモール・フェイセスみたいにハードにして、ソウルフルなヴォーカルを入れたら、アメリカでむちゃくちゃ売れるだろうということなのです。

 

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tags: Steve Marriott The Small Faces

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