久保憲司のロック・エンサイクロペディア

シック『グッド・タイムス』  4弦の開放弦をドゥン、ドゥン、ドゥンと3回弾くだけ。早く日本からもこのベースを使ったかっこいい曲出てきたらいいのに


一番かっこいいベースと言えばシックの「グッド・タイムス」。なぜこんなにかっこいいのか全く謎です。

4弦の開放弦をドゥン、ドゥン、ドゥンと3回弾くだけです。

 

 

それなのに、なぜこんなに心がウキウキするのか、ときめくのか、神からの贈り物としか思えません。弾いているのはバーナード・エドワーズです。日本でのライブ終わりにホテルで亡くなって本当にショックです。ジョニー・ギター・ワトソンも日本のライブ中に亡くなったし、過酷な仕事をしているミュージシャンに日本への移動は負担になっているのかなと思ってました。

昔、アーティストをホテルに迎えに行く時、死んでたらどうしようと不謹慎なことを考えたりしてましたけど、それくらいツアーって過酷なんです。一度ベンチャーズのツアマネしたことあるのですけが、ライブの後は食事にも行かず、すぐにホテルに帰るので、めっちゃ楽でした。当時はなんで酒とか飲みに行けへんのかなと思ってたんですけど、今はベンチャーズの気持ちがよく分かります。

シックのナイル・ロジャースはまだ遊んでそうですね。それとも実はベンチャーズみたいにすぐにホテル帰って、寝てるんですかね。

すごい昔の話ですけど、デヴィッド・ボウイとナイル・ロジャースが出会ったのって、元ジェネレーションXのビリー・アイドルとナイル・ロジャースがクラブに遊びに行った時に、そこにボウイがいた時です。ナイル・ロジャースはボウイのことを知らなかったけど、ビリー・アイドルは「ファッキン・デヴィッド・ボオゥ〜イがいる」と興奮して会いに行ったことが始まりでした。ビリー・アイドルがいなかったら、あの名盤『レッツ・ダンス』が生まれず、ボウイがメガ・スターにならなかったかもしれないと思うと笑ってしまいます。なぜパンクのビリー・アイドルがナイル・ロジャースと遊んでいたの!?と思う人がいるかもしれないですけど、イギリスの音楽にはディスコというかクラブが重要で、シックは神様なんです。

僕も史上最強の曲は、ナイル・ロジャースがプロデュースしたシスター・スレッジの「ロスト・イン・ミュージック」と思ってます。デュア・リパもこの曲に「子供の頃影響受けた」と言っていて、今の世代にも受けているんだと嬉しいです。

 

 

「グッド・タイムス」に戻します。この曲がどれだけ気持ちいいかというと、すぐにクイーンのジョン・ディーコンが真似して、「アナザー・ワン・バイツ・ザ・ダスト」を作ります。本当に「グッド・タイムス」の3音の間というかグルーヴを下地にしただけです。ベース・ラインには著作権はないので、パクっていいのです。

 

 

三音ってことはないですか、ドゥン、ドゥン、ドゥン。ドゥン、ドゥン、ドゥン、ドゥ、ドゥ、ドゥ、ドゥ、ドゥ、ドッドドン。というフレーズです。あれ、ちょっと違うか、とにかく、EとAのコードしか使ってなく、スケールは実はこれドリアン・スケールなのです。普通にEマイナーとかなのかなと思ってたんですけど、ドリアン・スケールなんか僕は全然使ったことないので、よく分かんないですけど、それが「グッド・タイムス」を洒落た感じにしているのでしょうか。「アナザー・ワン・バイツ・ザ・ダスト」は普通にEマイナーのスケールだとおもいます。コードがA 、F#、G 、Cと展開しますから。でも「グッド・タイムス」と同じ出だしのEの三音が支配して、独特な雰囲気に感じてしまいます。

 

続きを読む

(残り 1630文字/全文: 3153文字)

ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。

ウェブマガジンのご案内

会員の方は、ログインしてください。

tags: Chic

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ