久保憲司のロック・エンサイクロペディア

The Beatles “Helter Skelter” ザ・フーの「恋のマジック・アイ」よりもっとヘヴィな曲を作ってやると作られたのが「ヘルター・スケルター」です

 

 

一番いいエレクトリック・ギターの音は、ザ・フーのピート・タウンゼントがライヴ・アルバム『ライブ・アット・リーズ』で弾くp-90がのったSGの音だと書きましたが、本当言うともっといい音がありました。それは同じくピートが『フーズ・ネクスト』で弾くグレッチの音なのです。

 

 

聴いて見てください。この頃のピートの音ってミニハムがついたレスポールと思っている方が多いと思いますが、グレッチの音なんです。

グレッチ、ブライアン・セッツァーやベンジーさんが弾く、あのロカベリーなギターが最高のロックの音!?って声が聴こえてきそうですが、そうなのです。グレッチが最高のロック・ギターなのです。『トミー』を凌ぐロック・オペラとして考えられた『ライフハウス』の残骸の中で聴こえるギター・サウンドこそ究極のロック・ギター、サウンドなのです。

このギターをピートに与えたのはジョー・ウオルシュです。ジミー・ペイジにもあのレスポールを与え、ピートにはグレッチを与える、神みたいな人なのですが、たぶんジョー・ウォルシュは小遣い稼ぎで、趣味でギター・バイヤーのバイトをしていたのでしょう。

チープ・トリックのリック・ニールセンも売れない時はそんなバイトをしてました。ジェフ・ベックのあの虎目一杯のレスポールはリック・ニールセンから貰ったものです。よくネットなどでは貰ったと表現されていますが、売ったのでしょうね。当時でも1000ドルくらいしていたものをあげたりしないです。

まっ、みんなバンドで生きていくのは大変です。ブライアン・セッツァーもグレッチだけじゃなく、フェンダーなんかのいいコレクションを持っているんですけど、「娘が大学行くことになったら、売る」なんてインタビューで答えていたので、みんな大変です。

そんなピートの最高傑作を僕は3枚目『ザ・フー・セル・アウト』にも入っているシングル『恋のマジック・アイ』だと思ってます。ピートがSG、グレッチを持つまえの話です。リッケンバッカーの12弦をメインに作られた曲です。

 

 

「マイ・ジェネレーション」「アイ・キャント・エクスプレイン」「サブステチュート」「ピクチャー・オブ・リリー」などなど数々の名曲を作ってきたピートが最終兵器と考え最後まで持っていた曲です。

ピートは絶対この曲は大ヒットすると思っていました。

どういう曲かというと一番ヘヴィーな曲になると確信を持って作ったのです。ずうっとEの開放限がなっていて、今聴くと、これがシューゲイザーの一番最初の曲かと思える感じです。どんなコードの時もとにかく6限開放のEの音がしている。

 

 

当時メロディ・メイカーという音楽雑誌にコラムを持っていたピートは“ロックで一番ヘヴィーでノイジーでラウドな曲が出来た“と書いたのです。

これこそロックで一番ヘヴィーでノイジーな曲が出来たと、「エニウェイ・エニハウ・エニホエア」でザ・フーのライブさながらのギターをぶ壊わす前のようなワイルドなプレイもちゃんと入れているれる(モッズ(若者)がバイクという移動手段を手に入れて、どこでも自由に行けるようになったということを歌にしているので、バイクがブン、ブン走っている模様を再現してるでしょうけど)ピートが自身満々で書いたのです。

それを読んだビートルズのポール・マッカトニーが一番ヘヴィーな曲だと、じゃそれよりもっとヘヴィな曲を作ってやると作られたのが「ヘルター・スケルター」です。

 

 

 

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tags: The Beatles The Who U2

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